第3話 誓い
「……おはようございます、
「……おはようございます、
「そうですか、それは良かったです」
柔らかな
柔らかな毛布の中で、柔和に微笑みそう口にする秀麗な男性。そんな彼があまりにも可愛く、そしてあまりにも愛おしい。これが夢だと言われても何ら驚きはありませんが、幸いなことに紛れもなく現実で。
あれから、およそ一年――風護さまと私は、今や夫婦として共に
『……
あれは、一年ほど前のこと。
思いも寄らない光冶さまの言葉に、ただただ茫然と呟く私。……えっと、どゆこと? だって、光冶さまは私ではなく――
『――うん、そうだよ。知っての通り、僕が好きなのは
すると、私の心を読んだかのように微笑み告げる光冶さま。……そう、彼が好きなのはお姉さま。なのに、どうして私に……もしや、今や既婚の身であるお姉さまへの想いは叶わないから、せめて妹である私と――
『……ああ、心配には及ばないよ。朝乃さんへの叶わぬ想いを、君で代用しようなんて微塵も思っちゃいないから。ただ、これは――僕らの結婚はいずれ、お互いが望んで止まない結果に導いてくれると確信しているんだ』
『……どういう、ことでしょう?』
すると、再び私の心を読んだかのように告げる光冶さま。……だけど、全く意味が分からない。望んで止まない結果に導く? いったい、この人は何を言って――
『……そう、
一人困惑に陥る最中、不敵とも言えよう笑みで告げる光冶さま。何故、そこで彼のお兄さま――風護さまのことが出てくるのか……なんて、流石に確認するまでもなく。私が幼少からずっと彼へ――風護さまへ叶わぬ想いを寄せていることなど、昔からの馴染みである光冶さまが知らないはずがありませんし。
『――これでも、僕は朝乃さんをずっと見てきた。だから、知ってる。彼女が君を――自分より遥かに優れた妹である君を、ずっと羨み妬ましく……そして、今も思っていることを。彼女が兄さんと交際し結婚したのも、それが最たる理由と言っても過言じゃない。なにせ、朝乃さんにとって唯一君に優越を感じられる部分だからね』
『…………』
『……まあ、それでも兄さんのことを愛してはいるだろうけど……だけど、
『…………』
そう、淡く微笑み告げる光冶さま。彼のお話を纏めると――お姉さまが風護さまと交際し結婚したのは、お姉さまにとってこの上もなく羨み妬ましい私が風護さまを心より深く想っているから。そして、そんな光冶さまの推測は、私の知るお姉さまの印象と怖いくらいに何ら
『――朝乃さんに振られた兄さんが、君を選んでくれるとは限らない、と?』
『…………はい』
すると、またしても私の――それこそ、気味の悪いほどに私の懸念を言い当ててくる光冶さま。……うん、なんなのこの人? 超能力でも備えてるの?
『……それこそ、間違いなく杞憂だよ。そもそも、僕から言わずとも君なら十二分に知ってるでしょ? 君の大好きな兄さんが、いったいどれほどにお人好しなのか』
『…………』
そんな私の畏怖を余所に、何とも楽しげな笑みでお尋ねになる光冶さま。ここで簡単に頷くのも癪ですが……ですが、否定など皆目できなくて。
……ええ、もちろん知っています。彼が、どれほどに優しいかを。自身の弟に裏切られ捨てられた私を、自分には関係ないからと放っておける人じゃないことを。私が望めば……いや、望まずとも私を選んでくれる。誠心誠意を以て私を愛そうと、幸せにしようと努めてくれる――彼が、そういう人であることを。
『――さて、改めてだけど……僕と、結婚しない?』
すると、改めて尋ねる光冶さま。妖しく光るその透き通る瞳には、どこか確信めいた色さえ宿っていて。そんな彼に、私は――
「ところで、珈琲でもいかがですか? 咲夜さま。実は昨日、とても上質な豆が手に入りまして」
「……はい、是非頂きます。風護さま」
小鳥の声が優しく響く和の居間にて、穏やかな微笑でそう問い掛ける風護さま。そんな彼に、同じく微笑み頷く私。ちゃんと笑えてるといいのですが。
そっと、庭園の方へと視線を移す。そこには、見事に輝く黄金色のイチョウの姿。そのあまりの眩さに、思わず目を逸らしてしまうほどで。
「……あの、風護さま。……今、幸せですか?」
「……ええ、お陰さまで。咲夜さまは?」
「……それなら、よかったです。ええ、もちろん幸せです。……この上もなく、幸せです」
「……そう、ですか。それなら、よかったです」
そう、躊躇いつつ尋ねてみる。すると、優しく微笑み答えてくださる風護さま。尋ねずとも分かっていた、望み通りのお返事を。……うん、ありがとう。そのお言葉だけで、私は本当に救われますから。
……うん、分かってる。私は、罪を犯した。風護さまのお気持ちを――お姉さまに対する
柔らかな陽射しが優しく照らす空間で、そっと目を
……ですが、このまま苦しめ続けるつもりなどありません。必ずや、私と同じ……いえ、私以上に貴方を幸せにすると誓います。だから……どうか、どうか――
――これからも、そばにいてもいいですか?
誓い 暦海 @koyomi-a
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます