ep.14 襲撃
忘れもしない。あれは自分が坂道を転がり続けて突っ込んだ廃虚だ。しかし気を失ってから目を覚ますと普通の家に変わっていて少女ミアが住む家になっていた。そんな不思議な経験をした場所。
「どうして此処を?」
「私が派遣されたのは、正体不明の反応の調査って名目なの。その反応が強く出てたのはこの辺り」
「おい!ちょっと待てって」
カリサは廃墟の中に躊躇も無く入っていく。楓も戸惑いつつも彼女の後を追って中へと進んだ。あの時はそれどころじゃなくて何とも思わなかったが、まるでホラー映画に出てきそうな室内だ。一人なら間違いなく引き返すだろう。
不思議だったのは家の間取りだけはミアの家と同じ。かなり劣化していて内装などは見る影もないが。しばらく探索を続けた後ある部屋にたどり着いた。
「この部屋の壁壊れちゃってるわね」
「あ、俺が壊した所だ」
自分が壁を突き破り侵入してしまった部屋。壁にはそのまま穴が空いている。
「何よ。来たことあるの?」
「まぁ…色々成り行きで」
そう言いつつ部屋の中を観察すると、タンスだった物が倒れているのを発見した。この時自分が気を失った理由をようやく理解した。
「この辺に棺桶みたいな物があったんだけどな」
「棺桶?」
「確かにあったはず。おかしいな」
ちょうど倒れたタンスの下の辺りか。以前あった筈の棺桶らしきものは見当たらない。
(私達以外にも最近何者かが来た形跡がある。それに)
「…特に目ぼしい物は無いようね。さて」
そう呟いたカリサはメリケンサックのような物を手に嵌め始めた。あれが彼女の神器だろうか。
「急にどうした?」
「さっきから監視されてるのよ。恐らく相手は二人」
「それは不味くない!?不法侵入だし通報されてるかも…」
「バカ」
焦る楓を置いて壁の穴から外へ出ていく。慌てて後を追うと二人組の男が立っている事に気づいた。黒いスーツに身を包んだ巨漢の男と、スリムではあるがスーツの上からでも分かるほどガッチリとした体型の男。何故だかこちらを見下すような笑みを浮かべている。
「先手を打ってこないから余程自身があるか、臆病かのどちらかと思ってたけど、どうやら前者のようね」
「ちゃんと気づいたか」
「ヒヒッ。わざと気づかせたんだよ」
言動や雰囲気から見ても明らかに一般人では無いと確信を得るには充分だった
「おっさん達、誰だ?いい歳して肝試し?」
筈だが楓はやはりこういった空気を読むのが苦手だ。この土地の所有者ではなさそうだと見るやお気楽モードへ切り替えていた。
「ヒッ。本当にあれがオーガを殺したガキですか?」
「バカの振りをしてるだけかもしれん。ちゃんと警戒を続けろ」
(オーガ?なんであいつらが知ってるんだ?)
森でオーガを戦闘したことは瞬と自分しか知らない事だ。なのに何故あの男からその情報が出てくるのか。
「アンタ達、結局何しに来たの?戦いたいならさっさとしてくれる?」
「戦うって…相手は人間だぞ?」
今のところ怪しさはあるが、二人組から物騒な気配などは感じていなかった。何故彼女はこうも最初から喧嘩腰なのだろうかと楓は顔を顰めた。
しかしカリサの提案に男達からの返事は無く、ただ不気味な笑みを浮かべるだけだった。だが巨漢の男が不意に指を鳴らした数秒後、周囲からただならぬ気配を感じた。
「どうなってんだ!?」
楓が辺りを見渡すとこの場にいる筈の無い、邪種に囲まれていた。それも数え切れない程に。以前自分を追ってきた犬や猿達とおまけに鳥の形をしたのまでいる。
「街中で襲ってきた邪種。アンタ達の仕業ね」
「何故そう思う?」
「大体想像つくわ。あんたらヴィクトリアの連中でしょ」
「ヒッ!なんで知ってるんだ!?」
「やっぱりね」
「ウリト…余計な事を…」
ウリトと呼ばれる巨漢の男がカリサの返事に動揺し、口を滑らせた。ヴィクトリア…聞いたことは無いがそれが奴らの所属している組織の名前なのだろう。
「どうやってその邪種達を操ってるかは知らないけど、その技術を人類の役に立てようと思わないわけ?」
「何を言っている。お前らロイヤルの連中より、こちらの方がちゃんと人類に貢献しているというのに」
(邪種を操る?何を言っているんだ?)
会話の内容が専門的になってきて、一般人である楓はついていけなくなっていた。しかしこれから戦闘が始まるという事だけはわかる。
(一応俺の神器は持ってきてる。カリサの戦闘力なら出番は無いかも知れないが、もしもの時は加勢しなきゃな)
「まぁいいわ。アンタ達は拘束して持ち帰る」
「は!?」
次の瞬間、大量にいた邪種の群れの半数が砕け散っていた。カリサが目にも留まらぬスピードで一掃したのだと一般人である楓はすぐには理解出来なかった。
(次元が違う。俺が介入する余地は無いな…)
味方ですら気圧される程の戦力。これが人類最強戦力と言われる組織に属している人間。誰が見たって納得するだろう。
メリケンサックのような神器から繰り出される一撃も凄まじく、拳を振っただけでその場の空気が揺れる。あっという間に全ての邪種の討伐は完了されていた。
あれだけの数の邪種を倒したというのに、呼吸を乱さずつまらなそうな態度のままだった。
「これだけかしら?何か言い残すことはある?」
「まさか。お前の実力はちゃんと予習してきたさ」
あそこまで圧倒的な力を見せつけられても二人組は焦るどころか、当然といった態度のままだった。カリサが男達に向け構えを見せた瞬間、スリムな方が内ポケットから何かを取り出し地面に投げ捨てた。
「嘘だろ…あれって」
「…」
事態を重く見たのか、流石のカリサも口を閉じ顔を強張らせた。今までの余裕そうな態度から一変、初めて戦闘体勢に入ったようにすら感じる。
「ロイヤルと言っても貴様のような下っ端にレベル5の相手がちゃんと務まるかな?」
目の前に現れたのは森で見たのと同じオーガと呼ばれる邪種。
「ヒッ!特別に5体も用意したんだ。楽しめよ」
楓の脳裏には絶望という文字が浮かんでいた。
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