第14話 Exh.1 Phase.Ⅲ パート④
一方で、守りに入る生徒会の陣地を崩すべく、
『部長、やはり
生徒会監査の香雲
守りの要の
『近くにいないのであれば、一旦無視しましょう。急な接近に備えて、索敵だけは怠らないようにしてください』
『わかりました』
しかしながら、そろそろ“ソニック”の効果は切れた頃とはいえ、二人の合流が遅いなと雪葵は思っていた。
姿が見えない来夜は、実はスタンプラリー同好会の陣地の方へ行っているのだとしたら、二人と遭遇していてもおかしくない。真宙はもとより、夏灯では来夜の相手にはならない。まさかと思い、雪葵が索敵範囲を広げようとしたその時、あるシステムログが表示される。
[
これには景も思わず驚いたように手を止めた。
奪取とはつまり、相手陣地のスフィアを奪い、自陣に持ち帰ったということだ。真宙が救出されて逃げる際に、隙を見てスタンプラリー同好会のスフィアを奪っていたのだ。
奪取はボーナスなしの加点としては最大の3ポイント。さらに真宙のポジション“道化師”の効果で、ボーナスポイントが追加された。これで現時点で暫定一位。これを得られたことは、天文部にとって大きな後押しになった。
時間を同じくした別の場所では、そのシステムログを見た香雲来夜が思わず口元を緩めて天を仰ぐ。
「マズいねぇ、この状況……。ともちゃんもいないし、どうも俺が頑張らなきゃいけない流れだねぇ。このエキシビションマッチ、生徒会として負けるわけにはいかないからなぁ。……ああでも、なかなかに愉快だ。
ぶつぶつと独り言ちる来夜は今、ほとんど周囲が更地となった、ステージ東部へ単身でやってきていた。目の前には、生き残っている六人の図書委員会メンバーが、陣地の中で手に汗握っている。
「お前ら、その中にいれば助かると思ってるんだろ。ははは、甘いねぇ。そんな考え、俺が一人で潰してやるに決まってるだろ」
そう宣言すると、来夜は刀を取り出し、流れるような剣捌きで陣地の結界を何層も削っていく。そのスピードは、中に立て籠もるメンバーを恐怖に陥れるには充分過ぎた。それを敏感に察知した委員長の
「まあ待て。まだ破られたわけじゃあない。だが、そうだな。破られるのも時間の問題だろう。皆、武器を持て。相手は一人だが決して油断するな。全員が本気で倒そうと思えば勝てない相手ではない」
トリロの言葉を聞いて、来夜は余計に“甘い”と思わざるを得なかった。防衛戦術そのものを否定したいわけではない。やり方がぬるいと感じたのだ。
立て籠もるにしても、せめて狙撃手の一人くらい近くに配備しておくべきだ。罠も設置しておくと良いだろう。
(まあどっちも、こうして更地になってしまえば意味はないかもしれないが――)
ほどなくして、来夜は一人きりで図書委員会の陣地の結界を破った。だがそのために相当量の燃料を消費しており、このまま図書委員会メンバーとの戦闘に突入した場合、燃料切れを起こす可能性が高い。
しかし、来夜が単身でここに派遣された目的は、一つでも多くのポイントを取ること。そして真琴はそこまでは明言しなかったが、来夜の帰還を当てにしていなかった。それはつまり、来夜はここで討伐されるつもりでの突攻を図っていたのだ。
『
甘い声で通信を飛ばすと、無言で祈祷が発動された。つれないなとは思いながらも、これで戦う準備は整った。
結界が解かれた図書委員会は、来夜に向けて総攻撃を仕掛ける。
しかしながら、来夜のアビリティ構成はあまりにも戦闘に特化していた。AGIを上げて体感速度を上昇させる“体感加速”、一度だけあらゆる攻撃を防ぐ“絶対防御”、障壁に反射性能を付与した“反射鏡”、素早い動きの中でも認識能力を落とさない“動体観測”など、単体で集団を相手にしたとしても、充分に戦い切れるだけの性能を誇っていた。
そこへさらに、祈祷・“四葉”の効果が付加される。この祈祷は、五分間、クリティカル発生率を25%上昇させるというもの。できるだけ省エネで多くの相手を討伐したい来夜としては、一撃の火力を上昇させられるクリティカルに期待をしていた。
(最初に突撃してくるのは、最もAGIの高い奴。だが動きが直線的で、ただ速いだけ。軌道は読みやすい。一番厄介なのは、火力も射程もある
来夜は、真っ先に突っ込んできた
「残念、狙いは最初から君だよ」
そう不敵に笑んで、来夜は刀の軌道を変え、切那に強力な一太刀を浴びせる。
[心持切那 核損傷 10層 討伐]
[香雲来夜 +2pt(討伐)]
攻撃アビリティを使用していたことと、クリティカルが決まったこともあり、たった一撃で切那を討伐した。
来夜のポジションは“英雄”。相手を討伐した時、その相手にダメージを与えたのが自分だけの場合、追加でボーナスポイントを得られるうえ、攻撃ランクと防御ランクが1ずつ上昇するという特性がある。相手を倒せば倒すほど自身がより強くなれるポジションであり、まさに一騎当千の来夜に相応しいポジションでもあった。
「そんな……切那くん……」
来夜が再び愛目掛けて刀を構えると、それをさせまいと、璃門が素早く間に割り込んだ。
「やめろ! それが奴の狙いだ!」
トリロが珍しく声を荒げて叫んだが、時既に遅し。最初から愛を庇おうとする者を狙っていた来夜は、ワンテンポ遅らせて刀を振るい、璃門が攻撃を受けようと構えた剣を避けるようにして薙いだ。
[橘橋璃門 核損傷 10層 討伐]
[香雲来夜 +2pt(討伐)]
「ああ……璃門くん……!」
またも目の前で自分を庇った者が討伐され、愛の精神は揺らぎ始めていた。図書委員会は大きく連携を崩され、しかしトリロを中心に陣形を組み直そうと試みる。しかしこの混乱を利用しようとしていた来夜は、相手が冷静になる隙を与えない。
再び愛を狙おうとする来夜。それを防ごうと彼の背後から攻撃を仕掛けた
[落窪蒼穹 核損傷 7層]
しかしこれは一撃で討伐とはいかなかった。それもそのはず、来夜の燃料は、もうほとんど空になってしまっていたのだ。狙ったアビリティを出す燃料がなく、攻撃力が想定よりも上がり切らなかった。
(チッ――仕留め損ねた。そろそろ潮時か。点取り屋の仕事としちゃ及第点とはいかねぇが、しょうがねぇ……)
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