第5話 Exh.1 Phase.Ⅱ パート①
フェーズⅠとフェーズⅡの間には十分間の休憩時間があり、この時間は作戦会議の時間でもある。捕縛されてしまった
フェーズⅡは、フェーズⅠを無事に生き延びた
「1ポイントも取れねぇなんて、随分と無様な結果だなぁ、部長さんよぉ」
アイの嘲笑するような物言いに、景はそれが挑発だとわかっていても反応してしまう。
「フェーズⅠで得られた情報、相手にかけた負担、払った犠牲。それらは決して無駄だとは思いませんよ。スタンプラリー同好会には点を与えてしまいましたが、他チームは軒並み無得点。次のフェーズでどう動くかが重要です」
「オレが派手に暴れて点を取ればいい。結果出しゃ文句もねぇ――いや、付けようがねぇだろ?」
「……アイくん、昨シーズンはそれで失敗したの、もう忘れたんですか? それなら私ももう助けてあげませんよ?」
美瑚に痛いところを突かれ、アイは黙り込む。昨シーズンでどんな目に遭ったかを思い起こし、やがてきまりが悪そうに視線を外した。
「……悪かったよ。一人ではやらねぇ。けどな、点を取るのが正義だってことには変わりはねぇんだ。そうだろ? 勝つためにはな」
美瑚に叱られて少しは考えを改めたかと思ったが、アイは自分を曲げようとはしない。景は深くため息を吐いて、そんなアイを冷たく見下ろした。
「勝つことはたしかに重要です。ですが、再現性のない勝利には価値がありません。クラウン・スフィアはリーグ戦。ただ一回きり勝てば良いわけではないのです。あなたのやり方で全勝できるならそれでも構いませんが、その保証はあるのですか?」
「めんどくせぇ……。そんな頭でっかちな考えじゃ、動くべき時に動けねぇよ」
景はまだ何か言いたそうにアイをじっと睨みつけるが、小さく首を振り、またため息を吐いて自分を落ち着ける。
「……時間がありません。次のフェーズの作戦を伝えます。相手の陣地の場所は大体絞れました。フェーズⅠの勢いがあるスタンプラリー同好会を狙うよりは、戦力の落ちている生徒会を狙う方が勝機はあるでしょう。私と冠原で生徒会のスフィアの奪取を試みます。虎野は
景の指示を聞いて、アイが満足そうに鼻を鳴らす。
「ふん、結局好き放題暴れろって指示じゃねぇか」
「……何を聞いていたんですか、あなたは」
フェーズⅡ開始の時間が迫り、フェーズⅡから参戦する
「押すなよ、狭いんだから」
「一番場所取ってるの、アイくんですよ……」
「こんな時までじっとしていられないのか……」
わがままを言うアイを窘める美瑚。アイはそれで大人しくはなったが、景は頭を抱えずにはいられなかった。
「みなさん、いってらっしゃーい!」
夏灯に見送られ、天文部メンバー五人が再びステージに転送されていった。
フェーズⅡが始まっても夜は明けず、ステージの損壊具合も引き継がれる。全員が陣地から再スタートできるのが救いで、フェーズⅠの終わりにリラに追い詰められていた景も、再び自陣からやり直すことができる。
また、フェーズⅡには特殊ギミックとして、強敵存在・ドラゴンの出現がある。
このドラゴンを討伐することでポイントを得られるが、単身で相手にできるほどの性能ではなく、ドラゴン討伐にあたって他チームと一時的に共同戦線を張ることも多い。でなければ、ステージを崩壊させ、周囲を破壊し尽くす勢いは止まらずにメンバーや陣地にも影響が及ぶ。
ドラゴンの出現によって単純なチーム対抗戦にならず、チームの枠を越えての共同戦線も魅力的だとして視聴者の人気が最も高いのがこのフェーズⅡ。その分注目もされているということで、無様な失敗は視聴者の落胆を生み、チーム人気の失速にも繋がる。
勝つこと以外にも、そうした背景からもこのフェーズは重要だと景は考えていた。
陣地への転送が完了し、それぞれが景の指示通りに動き出す。
ドラゴンの出現タイミングはフェーズⅡ開始から五分以内と決まっているが、制限時間が通常より短縮されるエキシビションマッチにおいては、フェーズⅡ開始から三分以内と早くなっている。この三分間で、いかにドラゴン討伐への構えが取れるかが重要になる。
『おい
景に隠れて雪葵と美瑚に個別通信を送るアイ。そうするということは、あまり良くないことだと自覚はあるらしいのだとわかり、雪葵は呆れたようにため息を吐く。
『また勝手な……。まあ、部分的にやるってことはそもそもできないけど、範囲を広げるくらいならできるよ。結果的に部長の方に範囲を延ばすことにもなるし、協力するのは別に構わない』
『そうですよ~、アイくん。お願いするときは、何て言うんでした?』
雪葵も美瑚もアイの頼みを断らなかったが、せめてもの誠実さを彼に求めていた。アイにも悪気はないのだろうことはわかっているが、彼の横暴さが加速してしまわないように、礼を通すことも覚えさせるべきだと彼らは考えていた。
『お願いしても、よろしいでしょうか』
『はい、よくできました。じゃあ――もうあと二分ですね、全力で索敵しますね~』
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