みんなとの1日

近郊

第1話




 これは、僕の1日です。

みんなと僕の話です。




 8:00

 徐々に生徒が教室に入ってくる。何名かが荷物を置き談笑をする。女子の何名かは友人らとトイレに向かい、また別の生徒は計画黒板に今日の予定を記入している様子がみられる。

やがて上着を着た女性が入ってくる。担任教師だ。

チャイムが鳴り、生徒は急いで席につく。

日直の2名が前にでて健康観察や連絡をする。

いつもと何も変わらない。



 8:40

 1校時目は数学だった。僕の苦手な教科。

担当教師が問題をだし、それを解く。

繰り返し。

ふざけた様子で発表をする生徒も現れる。

いつもと何も変わらない。



 9:30

 授業が終わり、生徒たちと教師が話している。読書をしている生徒もいる。

次の授業の準備をしている生徒に視線を向ける。

目があうことはなかった。



 10:00

 教室の窓から、クラスメイトが運動場で走っている様子を眺める。

マラソン大会も、もう近づいてきている。確か今日は3クラス合同で記録測定のはず。

練習が始まった。

気怠そうに歩いてる子もいれば、文句を言いながらも元気に走っている子もいた。

その雰囲気が嫌いだったな。


なんにも変わっていない。

 


 12:50

 移動教室も終わり、教室に戻ってきたクラスメイトが給食の準備を始める。

冬は特に冷たく感じる手洗い場で手を洗う。

それから……エプロンを着たり、食器を運んだり。

給食のメニューによってはじゃんけん大会も開催される。余った給食のデザートなどを取り合っている様子を見て笑うみんな。

僕も笑う。

……嘘だ。笑えない。

こんなところに居たくない。

どうせならずっと保健室に居たかった。

……なんにも変わってない。

変わらない。


この世界はあまり、変わらない。

人が1人、この世界からいなくなったぐらいでは。


でも……

「よっしゃぁ!俺の勝ち!」

クラスに響いた声にハッとする。

じゃんけん大会を制したらしい生徒が、嬉しそうにデザートに手を伸ばしていたところだった。

みんな笑っている……訳ではなかったけど。

悔しそうな子もいるし、食べるのに集中している子もいる。

僕がいなくなってもみんながみんな気にせず笑っている訳じゃない。

でも、悲しんでくれる子はいなかった。

関心を寄せてくれる子もいなかった。



 13:30

 5校時目は社会の単元別テスト。教室中に無数のカリカリとした乾いた音が響く。シャーペンのペン先が紙を走る。大半の生徒は集中している……って、いつまで続けるのだろう。

人間観察?なら生きているときから得意だったけど。休み時間、ぼっちの時によくしていたものの、からだを亡くしてまでするとは思わなかった。

いじめられてる訳ではなかったけど、教室は好きではなかったから、ここに戻りたくはなかった。

……僕がいなくなっても、いつもと何も変わらない。



 14:10

 休み時間。

騒がしい教室。

いつもと何も変わらない。

「そういえばさ、ここの席って誰だったっけ。」

僕の席に座ろうとしたクラスメイトが言う。

生前でさえ誰にも認識されてなかったから、仕方がないのかもしれない。

でも、その時に、はっきりと聞こえた。

「は?お前不謹慎だろ。そいつはさぁ、」

それは、話した事もないクラスメイトの声で。そこから何人かのクラスメイトが僕のことを話し始めた。

とたん、みんな形だけでも、表情を変えてくれた。

ちょっと意外で……嬉しかった。

多分僕は、学校が嫌いなんじゃなくて、1人が嫌いだったのかもしれない。

単純な僕は、その1言で友達になりたいと思った。みんなと。



 15:40

 掃除がはじまった。大変そうだったので、ほうきを手伝ってあげた。

みんなは信じられないものをみてるような目を僕に向けて、少し遅れて悲鳴をあげた。

びっくりしてほうきを落とす。

ああ、そうか。

みんなにはほうきが宙に浮いてるように見えたわけで。

いくら生きてるときと扱いがあまり変わってないからといっても、自分が亡くなっていることを忘れるなんて。

浮かれてる証拠だった。



 16:10

 みんなが帰りの準備をしているときも、話題はさっきのほうきのことだった。

思った通り、話はほうきの事から僕の話へうつっていった。

みんなが僕に関心をよせてくれたんだ。

これからこうやってしていったら、みんなが僕に気がついてくれるかもしれない。

もっと、もっと、もっと、関心をよせて、僕のことを話して、


こっちに来て。




 ◾️:◾️

 教室から、みんなに手をふった。

またあした。




























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