第五章:複数のボーイフレンド

金曜日の夜、ミクのスマホには複数のメッセージが届いていた。


健太(22・同僚)

『ミクさん、今週お疲れ様でした! また来週もよろしくお願いします』


翔平(21・大学生)

『今日は楽しかったです! また来週、連絡しますね』


拓海(25・デザイナー)

『ミク、土曜の午後空いてる? 新しい展覧会、面白そうだよ』


ミクはそれぞれに適切な返信を打つ。


同僚の健太には仕事モードの丁寧さで、翔平には少し可愛らしさを込めて、拓海には対等な友人としての軽さで。


「ボーイフレンド」と呼ばれる彼らは全員20代。カフェで時間を過ごし、街を歩き、時にはホテルに行くこともある。


肉体関係も「それなりに」盛んだ。


だが、ミクには明確な倫理規定がある。


第一に、未成年とは絶対に関わらない。


第二に、「浮気」という概念を自分なりに再定義している。


「彼氏・彼女の関係を正式に結んでいない限り、複数の異性と会うことは浮気ではない」


これがミクのルールだ。


彼女は誰とも「付き合っています」という関係にならない。


だからこそ、自由でいられる。


誰にも縛られず、誰も傷つけず――少なくとも、彼女の定義では。


拓海とはもう1年近く会っている。


翔平とは2ヶ月。


健太とはまだ同僚としての付き合いの域を出ていない。それぞれ関係の深さも温度も違う。


それを管理し、調整するのもまた、ミクの「努力」の一部だ。


「明日は拓海と展覧会か…」


ミクはカレンダーを確認する。


来週の水曜は翔平と、金曜は別の男子――大学院生の涼太(24)と会う約束が入っている。


全てが程よい距離感で回っている。


ただ一つ、ミクが決して、しないことがある。


それは、金銭的な要求だ。


交友相手に金銭を望むことはない。


とはいえ、おごってもらったり、小さなプレゼントをもらうことは拒まない。


それは「してもらう」ことではなく、「してくれる」ことを受け入れる姿勢だ。


ギブアンドテイクではなく、自然な流れの中で関係が育まれることを大切にしている。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る