由美子の手

島尾

昔は。しかし今は……

 私はまだ49です。


 と強調する由美子。先日運命的に再会した。一年前、由美子の手は老いゆく宿命を示すかのごとき白色のシワだらけだった。それが、なぜか改善し始めて、ありふれたものになりつつあった。


 美の壺(nhk)で、徳利の貫入を愛でる日本人の美学を知った。それは中学のころだった。しかしそれよりずっと前、小1くらいの小僧の時期から、私は陶器のヒビに無類の感激を覚えていた。ヒビの入るルートは空間全体に許されているためか、二つとして合同なものはない。似たようなものはあるだろうが、精細に観察すれば差異はすぐ判明する。


 由美子の手は唯一無二だった。逆に、唯一無二といえば由美子の手と即答できた。

 

 あのとき、唯一無二の「無二」の部分に陰りが感じられた。書くと、「無1.99653」などとなろうか。もしも、不安に駆られてヒビを隠して若く見られようとした、というなら、私は無言を貫く。ヒビが単に消えたのなら、私の胸に薄い悲しみとしか考えられない微細な隙間が、ピピ、と入る音が聞こえるようである。


 女としての由美子は20〜25年前に完全に魅力を失った。誠に残念ながら、もう、元には戻らない。それは……決して絶望ではない! なぜならば私は

 手としての由美子、

 大きめの声としての由美子、

 津軽としての由美子、

 旦那嫌いとしての由美子、

 上司に抗ってクビとなった悲哀者(49)としての由美子、

 UNHCRの募金勧誘員に「ちょっとー、忙しいんでー、いいですかー?」的な言葉をでかい声で男性的に堂々と直接言える勇敢な態度としての由美子、


 そして………………。


 明るい笑顔としての由美子。


 それらの由美子が今まさに芽生えた、或いはすくすくと成長しているフェヱズだと思うからだ(まるで初夏の水田の青い稲がどんどん伸びるように)。


 🌱🌱🌱🌱🌱🌱青汁をお飲み下さい、血圧を低下させてくれますから。由美子🌱





 由美子の手に会いたい。

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由美子の手 島尾 @shimaoshimao

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