フォロワーの数って気にしますか?

広井 海

第1話 消えていくフォロワー

「先輩、聞いてくださいよ。マジでヤバいんです」


 大学の図書館で参考文献を探していた僕に、後輩の美咲みさきが息を切らして駆け寄ってきた。スマートフォンを握りしめた手が小刻みに震えている。


「どうしたの、そんなに慌てて」


「あたしのインスタのフォロワーが、一人ずつ消えていくんです」


 美咲は人気の旅行系インフルエンサーで、フォロワー数は3万人を超える。大学でも彼女の友達からは「インスタの女王」なんて呼ばれているくらいだ。


「アカウント削除とかじゃなくて?」


「それが違うんです。フォロワーリストから名前が消えるんですけど、その人たちのアカウントは普通に存在してるんですよ。でも、あたしのことをフォローした履歴が完全に消えてる」


 美咲は画面を僕に見せた。確かに、フォロワー数が29,998人になっている。


「昨日までは30,003人だったんです。でも今朝見たら、五人減ってて」


「運営のバグとかじゃない?」


「最初はあたしもそう思ったんですけど」美咲は声を落とした。「消えたフォロワーって、全員あたしの知り合いなんです」


 そういって自分のスマホの画面を見ながら、声のテンポを上げていく。


「高校の同級生が二人、バイト先の先輩が一人、サークルの後輩が二人。みんな、リアルで繋がりのある人たちばかり。しかも、消える順番に法則があるような気がして……」


「法則?」


「最初に消えたのが、一番最近フォローしてくれた子。次が、その前にフォローしてくれた子。つまり、フォローしてくれた順番の逆に消えていってるんです」


 僕は椅子に座り直した。これは単なるSNSのトラブルではない気がした。


「それで、先輩に相談しようと思って。先輩、推理小説のサークルですよね」


「いや、僕はただの読書好きなだけだよ」


「でも、去年のミステリー研の研究発表、結構よかったみたいって聞きましたよ」


 それは確かにそうだが、フィクションの世界と現実は違う。だが、美咲の困った表情を見ていると、断る気にはなれなかった。


 「分かった。まず、消えたフォロワーのリストを作ってもらえる? 名前と、いつ頃フォローされたか、そしてどういう関係だったかを書いて」


 美咲は素早くスマホを操作し、メモアプリに情報をまとめ始めた。

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