手を出して

孤兎葉野 あや

手を出して

「ねえ、優梨。手を出して」

「……それ、どっちの意味なの?」

 恵莉の言葉に、私は尋ねる。


 二人きりの部屋、両親が出掛けている私の家、そして、私達の関係……極めつきは、恵莉の悪戯っぽい笑みだ。

 分かって、言っているんだよね?



「やだ、優梨……何を想像してるの?」

「ちょっと……!? じゃあ、これでいいのよね?」

 わざとらしく、両手を頬に当てて、照れた表情を作る恵莉に、少し憮然とした顔を見せながら、私の手を差し出す。


「うん! さっき手を繋いだ時、優梨の手、すべすべだったよね。ハンドクリーム、変えたりしたの?」

 恵莉の両手が、すぐに触れてきて、壊れやすいものでも扱うように、優しく大切そうに撫でてくる……くすぐったくて、温かい。


「いや、いつも通りなんだけど……」

「ううん。これは絶対、前より綺麗。優梨、何かしてるよね?」


「私は、本当に何も……あっ、強いて言うなら、生活習慣とか、日々のお手入れかな……」

 話していて、頬が熱くなるのは、綺麗になりたいと思う理由が、目の前にいるからだろう。



「えっ……な、なんだか、嬉しくなっちゃうな」

 そんな私を見た恵莉が、何かを察したように、悪戯っぽい笑みを作る……今度は、本当に照れているのを、隠しきれないようだけど。


「そもそも、恵莉の手だって、すごく綺麗だと思うけどね」

「そ、そう……?」

 お返しに、こちらの両手も重ねて、そっと撫でてみれば、恵莉の顔も真っ赤になってゆく。

 きっと、私と同じようなことを思って、綺麗にしてくれているんだよね。


 お互いの手に、愛おしむように触れていれば、私達の体温は上がり、鼓動も速くなってゆくのを感じる……



「ねえ、優梨。そろそろ手を出して」

「もう。最初から、そのつもりだったでしょ?」


「えへへ、ごめんね。優梨の手に触りたいのも、本当だったから……」

「仕方ないなあ。恵莉のも、気持ち良かったよ」

 たまに悪戯っ子なところを見せる、私の可愛い恋人が、ぽすんと体を預けてくる。

 すぐに受け止めて、ぎゅっと抱き合った後に、私達は両手の指を大切に絡め、気が済むまで体を重ねた。

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手を出して 孤兎葉野 あや @mizumori_aya

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