成長力無限のバッファー、追放され最強になる~僕が抜けて元パーティは壊滅した~

社会の猫

追放

 僕たち幼馴染四人はいつも一緒の冒険者だった。


 二年前、いつか勇者をも超える存在になろうとパーティーを結成し、そして、Aランク冒険者になるまで成り上がった。


「アート。お前、追放な」


 リーダー室。

 僕は、メンバー全員の前でリーダーに追放宣言をされていた。


 その言葉を聞いた瞬間、全身に一気に熱が入る。

 なんだ?突然。追放?どういう意味だ、それ。


「な、なんだよリーダー。冗談はやめてくれ」


 僕が焦りながら言う。

 突然の出来事に脳の処理が追い付いていない。

 追放?僕を?なぜ?冗談か?


 いや……これが冗談ではないことを僕は知っている。

 リーダーは嘘をつくときに人の目を見ない。

 リーダーは、僕の目をじっと見つめていた。


「アート。お前、正直足手まといなんだよなぁ」


 リーダーが口にする。


「”こうした方がいい”とか言って勝手に荷物触るし、訓練しても雑魚一体に後れを取る。その上魔法剣士の癖に魔法は下手で筋力もろくにねぇ」


「いやっ!それらは全部……」


「騒ぐな」


 僕が口を開いた瞬間、リーダーが一喝する。

 僕はその圧に負けて口を閉じてしまった。


 誰もやろうとしない荷物の整理や戦闘中の指示は戦闘じゃ役に立たない僕の数少ない役目だったのに。

 まさか、それが否定されるなんて。


「二年前からなんも変わってないの、お前だけだぜ?何してたんだよ、今まで」


 リーダーが僕を睨む。


 変わってない?そんなことない。僕は変わった。

 冒険者としての知識はここにいる誰よりもあると胸を張って言えるし、戦闘では足を引っ張っていたがそれ以外では完璧とまでは言えないけどある程度のレベルで手伝えているはずである。


 僕だって頑張ったのだ。


「悪ぃけど、これ全部こっちでは話し合ってんだ。満場一致だったよ。”雑魚はいらねぇ”ってな」


 それなのに……


「……嘘だ。嘘だよな?皆」


 リーダーが俺の顔を見つめる。


 後ろにいる二人は、静かに頷くだけだった。


「お前はいらない。今すぐ出ていけ」


 ……あぁ、そうか。

 誰も、僕の努力を見てくれていなかったんだな。

 じゃあ、もういいか。


 何かが、吹っ切れた。


 もうこのパーティーに僕の居場所はない。


「ごめん。今までありがとう」


 僕がドアを開け、部屋を出る。


「チッ」


 リーダーの舌打ちが、かすかに聞こえた。




「さて、これからどうしようかな……」


 とりあえず安宿に泊まり、今後のことをゆっくりと考える。


 やっぱやるなら冒険者だよな……冒険者以外の職も考えてはみたものの、僕の今までの経験や知識を役立たせるには冒険者しかない。


 しかし、他のパーティーに入っても直接戦闘ができない僕はすぐ追放されるのがオチだ。雑用限定で雇ってくれるパーティーがあったとしても、あまりお金になるようには思えない。


「となるとソロ冒険者か……」


 冒険者はその仕事の危険性からソロでやることは推奨されていない。

 しかし、今の僕にとって一番いい道はそれのように思えた。

 そうと決まれば早速依頼を受けに行きたいところだが……今は夜。


 夜の依頼なんてB級冒険者以上じゃないとろくにできるようなものじゃない。

 僕のランクは一番下のF……よくてEぐらいだろう。


 とりあえず、明日に備えて寝るか。


 明日の朝に一番で冒険者ギルドに行って簡単な依頼を受けることとしよう。

 まずはお金を稼ぐこと。

 これからのことは、これから考えればいい。




 朝。


 僕は軽い朝食を済ませ、冒険者ギルドで依頼を探していた。

 薬草採集や畑の手伝いは労力に対して対価が安すぎる。やっぱり受けるなら魔物討伐の依頼をしたいが……


「Eかぁ……」


 僕がボソッとつぶやく。


 僕が手に取ったのはゴブリン五体討伐の依頼。

 危険度はEだった。


 ゴブリンの弱点や習性は完全に理解している。一、二体になったゴブリンを順々倒していければ怪我を負う可能性はゼロに等しいが、ワンチャン囲まれてしまった場合……


「おっ、雑魚のアートじゃねぇか」


 後ろから野太い声がした。


「……ダモン」


 僕が後ろを振りむく。


 そこには、太った大男がいた。


「ゲヘへ。一人でどうしたんだよアート。パシらされてんのか?」


 ダモンが意地の悪い笑顔を浮かべながら僕に言う。


 こいつは僕がパーティーに所属しているときからずっと僕のネチネチ悪口を言ってくるから気分が悪い。

 しかも、Bランク冒険者と僕より圧倒的に強いため特に反抗することができないのだ。

 思えば、あの時、パーティーの誰も僕のことをかばってくれなかったな。


「パーティーは追放された。今は依頼を探しているところだ」


 僕がありのままを答える。


「ブハハハハ!!追放されたのか!ざまぁねぇなぁ!まっ、お前はあのAランクパーティーには相応しくなかったってわけだ」


 ダモンは下品な声で爆笑し、


「そうだな……お前をサンドバックとしてうちで雇ってやってもいいぜ?一発ぶん殴るごとに銅貨一枚でどうだ?」


 僕に馬鹿げた提案をしてきた。


「遠慮しておくよ」


 僕はなるべく早くこの場を去るためにゴブリン討伐の依頼書を掲示板から引きちぎる。


 そして、受付さんのところへ持って行った。


「この依頼をお願いします」


「はーい」


 そして僕は冒険者ギルドを後にした。


 やれやれ、朝から本当にイラつく奴だ。気分が悪い。

 まぁいい。実際、僕が戦闘能力がかなり低いのは事実だしな。


 ……それにしても、何か胸騒ぎがする。

 何かを見落としているような……。

 まぁ、気のせいか。


 僕は依頼先である森へ向かって行った。

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