第2話 手のひら
その後、二・三日は魔導ゴーレムの前に座り込んで「あの人」は、あ――でもない、こ――でもないって考え込んでたの。
だけど結局、何か振っ切れた表情になってジェットスクーターに跨ってこう言ったわ。
「王都に行って来るよ。だけど今度はその『トマト』がいるから、一人ボッチって言うことも無いだろ? それに偶には流れのドワーフやハイエルフも訪れるみたいだしね」
(うわっ、アタイが勝手に名前付けちゃったのバレちゃってる!)
そんな言葉を残して「あの人」は安堵の表情を浮かべたと思うと、この聖なる森を立ち去ってしまったわ。
(まぁ、勇者ってのも、女王みたいに周りが思ってるほど良いものじゃないのよね)
「あの人」が旅立ってしまってから、アタイは『ユグドラシルの大樹』の洞に引き籠もるのをやめて、トマト……魔導ゴーレムの手のひらの上に横になって聖なる森を見廻ることにしたの。
「いえいえプリシラ様は、寝てバッカリだと思うのですが……」
「ち、違うわよ! これは効率化なのよ。アタイが何往復しても足りなかった水遣りも、トマトのお陰であっと言う間に終わっちゃうんですもの」
「はい。効率化は素晴らしいです」
「それじゃあ、この間の続きを始めるわよ。これは何て言うのかしら?」
そう言うと、アタイの髪をひと房だけ摘まんで尋ねてみる。
「これは「
「どうせ、それも空気を読んだ『お世辞』なんでしょ?」
アタイはあの後、科学の知識を学びながら「あの人」の使ってるナントカ言語を覚えてるの。
そのナントカ言語って、異世界の中でも特殊な言語なんだって。
あなた知ってた?
いつも空気って言って、周りの会話に合わせなければならないなんて、とっても窮屈な言語よね。
空気って言ったって、実際にスーハー呼吸する空気とは全く別物なのよ。あなたは知らないでしょうけど。
「あの人」の故郷の言葉だから、あんまり悪く言う気は無いのよ。
だけど、語尾が「です」とか「ます」とか「ニャン」とか色々と有るのはどういうワケ?
(それでも少しでも覚えて、次に会ったら絶対にビックリさせてやるんだから!)
「じゃあこれは?」
そう言ってアタイの小っちゃな手のひらを、トマトのモノアイの前に翳して見せる。
「これは「
「はいはい、ありがとう。じゃあ、さっきまでアタイが横になってたのは?」
「これも「
「頑丈で立派ってことよね!」
「プリシラ様も、日本語の構造を良く掴んでいらっしゃいます」
「日本語かぁ。「あの人」の住んでた世界のことも、もっと一杯知りたいわ!」
「こちらから見ての異世界は、科学の知識や様々な自然現象を数式で計算できる世界なのです」
「へんてこな世界なのね。この世界みたいに何でも『魔法』の知識で割り切れたほうが簡単じゃない」
「その通りです。しかしこちらから見ての異世界には、その肝心な『魔法』がないのです」
(ハァ――ッ、魔法の無い世界なんて世も末ね)
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