僕の『手』・私の『翼』 〜ふたりの自由《そら》〜

かごのぼっち

奴隷オークション

 僕は生まれつき『手』がない。


 だが、欠損しているわけでもない。代わりに別のが生えているんだ。


 それは『羽』だ。


 どうやら僕にはハルピュイア(モンスター)の血が流れているらしい。通常、ハルピュイアはメスしか生まれない。つまり、僕はハルピュイアから生まれたのではなく、人族から生まれたんだ。

 どういうことかと言うと、ハルピュイアの卵はハルピュイアのメス(99%)か、人間の男性(1%)しか生まれない。僕はその卵から生まれた男性の遺伝子を受け継いた突然変異種で、人間の女性から生まれたハルピュイア(オス)に分類される。

 非常に稀有なことであり、人間界において、ハルピュイアと言う不浄なモンスターの風体をしているだけで忌避されるため、生まれた地点で人間扱いはされない。

 通常であれば、モンスターは討伐対象であるため、すぐに殺処分となるのだが、その希少性から僕は、両親から奴隷商へと売られたのだった。


 奴隷商は僕を奴隷オークションにかけるにあたり、その付加価値をつけるため、人間としての教育やマナーを叩き込んだ。そうして今、まさに僕はオークションにかけられようとしている。


「さあ、お集まりの皆さん! 本日は非常に珍しい奴隷をご用意しております! ご覧ください、ハルピュイアのオスの子どもです!! おっと、ご安心ください? ハルピュイアのように人にイタズラをすることはございません。しっかりと教育を施しております。さあ、ご覧ください!!」


 ザワザワ⋯⋯。


 会場内オークションハウスの反応は微妙だ。


 ハルピュイアの元のイメージが良くないために、エスティメート(落札予想価格)は低い。なので会場を盛り上げるためのシャンデリア・ビッド(飾り入札、つまり偽装入札)を用意している。


「うちの可愛いペットに良さそうね!! 五千万」

「たしかに! 装飾したカゴに入れて姫にプレゼントしよう! 六千万!」


 カモが喰いついた。相手はどうやら王族のようだ。これはオークショニアも価格をつり上げてゆくだろう。


「一億!」

「二億!」

「三億五千万!」


 オークショニアも欲深い。ニンマリ口角をつりあげ、目尻をだらしなく垂らしている。どうやら次のひと声で僕の価格が決まりそうだ。


「五億!」

「本日の、最高値、五億が出ました! さあ! 他におられませんか!?」


 コン!「五億でハンマープライス!」


 五億。これが僕の値段らしい。


 落札のあと、バイヤーが僕の商品確認のためにやって来た。僕は着ているものを全て脱がされて、体の隅々までチェックされる。


「歳はいくつだ?」

「ここのつです」

「今のお前の主人が誰だかわかるか?」

「はい。あなた様でございます」


 身なりがよく、高貴な香りがする。貴族様のことは勉強したことしか知らないが、僕の知る限りでは相当窮屈なイメージがある。


「オークショニア、このハルピュイアは少し聡いな? 主人に歯向かうことはないか?」

「隷属契約をするため、けっしてそのようなことはございません」

「去勢をする必要はないのか?」

「ございません。隷属契約に逆らえば此奴こやつは強制的に緊縛状態になります。どうしても必要であれば、そちらで施術してください」


 男は少し考えてから、うなずいた。


「わかった、交渉成立だ。隷属契約は主人と成さねばなるまい? 城での契約も可能か?」

「は。こちらの首輪をこのモノにはめるだけでございます。一度はめてしまえば、主人が解くか、死ぬまで外れることはございません」


 どうやら僕は、この国の姫のもとへ行くらしい。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る