金谷さとる

君の手



「行こう」

 きれいな服。

 かわいい髪型。

 正直、好き嫌いは多い子だと思う。

 そんなところも含めて嫌いじゃない。泥だらけ埃だらけ雑用や伸びた髪を売って生きてきたアタシに他の可能性を示した女の子。

 そばに居る男女の従者。

 アタシに利用されることを笑って受け入れる聖女様。

 戦闘センスも魔法センスも無さそうだけど、あげたレベルの体力と腕力でレベル十からの迷宮を楽しんでいる女の子。もちろん商売のセンスも無さそう。適切な大人がいなければあっという間に搾取されまくってそうな女の子。

 今でも大人のギリギリ善意のもと搾取されてる感じはある。

 アタシがお礼ができないことがちょっと気にいらない。

 彼女はアタシより強いし、ごはんも権力も人望も持っているのだ。搾取されてるんじゃ何て告げればアタシが権力者に切り捨てられる。

 この街についてからできた友人ジーナは困ったように笑って彼女を手伝っていきたいって言う。

 頷いてはもらえても、アタシにはジーナを笑わせてあげられなかったのがさびしい。

 彼女は「承諾してくれたらいいよ」と試したいというスキルを発動させた。

 出てきたメッセージは『譲渡』と『売却』悩ましいと思っていたら不思議そうに彼女がアタシを見上げていた。

 周囲に人はいるけど遠い。

「項目がふたつある」

「受諾と拒否?」

 ああ、そう言えば『拒否』の項目もあった。

 三つだった。

 彼女はアタシに道をくれた。

 じゃあ、譲渡でいいかと決めようとしたら「購入するよ」と彼女は笑った。

 ぱちんと彼女の小さな手がアタシの手のひらに勢いよく置かれた。

 ちょっと困った笑いが抜けるけれどアタシはそっと『承諾』を選択する。

 彼女がアタシから買い取ったモノは『購入履歴』アタシの買い物なんてたいしたことはないはずだった。

 彼女の友達が『夢』で買ったことがあるって言う『自動掃除機』……あれ?

 アタシあれがどうして掃除機だってわかったの?

 彼女の手をとったからたまごの殻にヒビが入った。

 ずるずるとこの世界に召喚される前の記憶がひろがっていく。

 こちら側で得た知識とすり合わせる。

 アタシの出会った小さな聖女様は実に抜けが多過ぎる。

 楽しかった。

 彼女の出すものは水も物も魔力を帯びていない。

 神殿の判断では彼女は聖女様ではないのだと彼女は笑うし、聖女であろうともしていない。

「普通の町娘として人生を過ごすの」

 なんて言ってたけど、ムリでしょ。

 それでもやっぱりアタシに手を伸ばしてくれたのはたしかに聖女の行いだとアタシは考える。

 貴女の手をとれて幸せだと。

 いろいろ笑っちゃいそうだからしばらく勇者サットー様は避けることにした。

 とうごろうってばなにやってんだろう。


 会えた。

 アタシは今、幼馴染みとまた会えた。

 とうごろうってばとうごろうのおじいちゃんにそっくりぃ。

 ヘラヘラしてたらミッシュおかあさんに「しゃんとなさい」って叱られた。



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