貼り紙

道化蛙

第1話

転職を機に新しい街へ引っ越し、今日から新しい生活が始まった。


土地勘を養おうと散歩をしていると、ゴミ捨て場の横にある地域の掲示板が目についた。

そこにはゴミの日や地域のイベントなどのお知らせが貼られている。

そろそろ祭りでもあるのだろうか、そんなことを考えながら眺めていると、白い紙に「こんにちは」とだけ書かれた貼り紙があった。


あれはなんだろうと思いながら、その日は家へ帰った。


次の日の朝、会社へ向かう途中でゴミを捨て、何気なく掲示板を見ると、今度は白い紙に「おはよう」とだけ書かれていた。

昨日とは変わっている。そう思いながらも、そのまま会社へ向かった。


その日の帰り道、あの貼り紙が気になり掲示板を見ると、今度は「こんばんは」と書かれていた。

時間帯に合わせた挨拶を貼っているのだろう。

なんとなく、腑に落ちた。


それ以降も気になって掲示板を見ることはあったが、やがて意識することもなくなり、気づけば一か月が過ぎていた。


そんなある日、部署の歓迎会があり、飲みすぎて終電を逃してしまった。

仕方なく、夜道を歩いて帰る。


途中、あの掲示板の前を通ると、そこには「こんばんは」と書かれた、見覚えのある貼り紙があった。


酔っていたせいか、ふと悪戯心が湧いた。

誰もいないのを確認し、ポケットに入っていたボールペンで、その紙に「こんばんは」と書き足した。


その瞬間、紙の文字がゆっくりと変わり始めた。


――やっと挨拶を返してくれたね。


それを見た途端、酔いは一気に覚めた。

何も考えず、そのまま家へ帰った。


次の朝、昨夜は飲みすぎて変な夢でも見たのだろう、そう思いながらゴミを捨てに行く。

掲示板を見ると、あの貼り紙がまだあった。


そこには、こう書かれていた。


おはよう。昨日の忘れ物だよ。


その下に、

僕のボールペンが置かれていた。

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貼り紙 道化蛙 @doukegaeru

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