療養ホテルHellion

@baruko04230124

 この高級療養ホテル「Hellion」において、静寂は金で買える最も高価な商品だった。都会の喧騒から隔絶された山奥に建つこのホテルに宿泊しているのは、上流階級出身の青年たちだ。我々はここで「療養」という名の人生におけるモラトリアムを貪っている。

 私の部屋は、最上階のコーナースイートだ。大手自動車メーカーの三代目である父の署名一つで、私はいつまででもこの部屋に宿泊できる。私は、ホテルの共有スペースのラウンジにたむろする他の宿泊者たちを、心の底から侮蔑していた。私はメモ帳に、彼らを解剖するための言葉を綴った。

『症例A:自己憐憫に耽る無能。彼は多発する自分のパニック発作を「繊細さ」と呼び変えているが、実際には低知能にありがちな論理的思考力の欠如による脳のバグにすぎない。』

『症例B:虚言癖のある令嬢。自身の実績や人間関係を嘘で飾り立て、薄っぺらい自慢話で虚無を埋めている。』

 私は彼らとは違う。私は、絶望をはじめとした自分の感情を論理的に定義できる。彼らはただの「故障した肉体」だが、私は「故障を記述できる知性」だ。この境界線こそが、私が彼らと同じところまで堕ちていないことの証左である。

 しかし、深夜に薬効が切れると、その境界線は血を流しながら消滅する。「クネクネ」が始まるのだ。私の身体は、私の高度な思考を嘲笑するかのように、奇怪に捩れ、痙攣する。私は床を這い、高級なペルシャ絨毯に顔を埋め、言葉にならない呻きを漏らす。

 その時、私は自分自身をどう定義すべきか分からなくなる。だが、翌朝に再び薬を飲みこみ、知性が加速し始めると、私は昨夜の自分を「一時的なバグ」として処理し、再び観察者の椅子に戻るのだ。

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