夕暮れの清涼剤

@y7novel

第1話

僕がキャラメルプリンを初めて食べたのは5歳の時だった。甘くて焦げたキャラメルが少し香ばしかったのを覚えている。とはいえ5歳の僕にこんな語彙はなく、ただおいしいぐらいしか話せなかったと思うが。

そしてそれから10年経った。

僕はキャラメルプリンを買ってきて、まだ食べずに冷蔵庫に入れている。

外は異様に暑い。ここ数年で夏は地獄のようになっていた。だから、冷たいプリンを冷蔵庫に残してある。ちょっとした清涼剤みたいなものだ。本来ならアイスとかの方がいいのかもしれないが、思ったよりも好きになれなかった。食べた時にキーンとくる感覚が、どうにも味の邪魔をする気がした。

プリンを食べるのは日が落ちて、夕日が沈みかけた頃と決めていた。暑苦しい夏が少しは涼しくなった頃にカラメルのおいしいのを食べるのだ。風鈴はいかにも涼しげな音を立てているが、窓を開けば熱波が入り込むことは、もう分かっていた。

「あついよおお」

エアコンと、扇風機。両方つけても、まだ暑い。扇風機に顔を近づけて声を出す。するとどこかユーモアがある声になる。

そんなことをしているうちに一番星が外に見えた。僕は、そろそろキャラメルプリンを出す頃だと思い、椅子から立ち上がった。

キャラメルプリンがない。

誰も通らなかったのに、忽然とプリンが消えていた。まさか知らぬ間に自分が食べてしまったのか?

そう疑心暗鬼していると、箱の裏にひっそりとキャラメルプリンがあるのを見つけた。どうやら、いつの間にか出していたらしい。

食べよう。

スプーンを近づけ、口に入れる。甘味と香ばしさが口の中に広がった。

5歳のころからこの店の味は変わらない。少しだけ昔買ってきてくれた親に感謝した。

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