異世界ハンター
@Dionik
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目が覚めると、そこは見渡す限りの草原だった。
朝日は静かに降り注いでいるが、その静寂は背筋を凍らせる。
ここは僕の知る世界ではない。
空気には鉄錆のような、生々しい血の臭いが混じっていた。
僕は茂みへ避難しようと歩き出したが、そこは生き物の気配すらなく、ただ不気味に静まり返っていた。
さらに500メートルほど進んだところで、僕は「奴ら」と遭遇した。
牛に似ているが、その姿は死臭漂うゾンビそのものだ。
体高は2.5メートルを超え、剥き出しの赤黒い筋肉が蠢いている。
目がないはずの顔には、裂けた口に数百の鋭い牙が並び、四本の角が不気味にそそり立つ。
奴らは五体で獲物の匂いを嗅ぎまわっていた。
そして、僕という「獲物」の存在に気づいた。
僕は息を殺し、木々の空洞へと逃げ込んだ。
手元にあるのは、汚れた制服と靴、そしてベルトだけ。
武器もスマホもない。
あるのは、剥き出しになった生存本能だけだ。
殺らなければ、喰われる。それが、この世界のルールだ。
深夜、「ギチギチ……」という不気味な音が響いた。
空洞の隙間から覗くと、そこには昼間の牛のような怪物がいた。
だが、奴は人間のように二本足で立っていた。
頭部は原型を留めないほど歪み、割れた頭蓋骨からは灰色の脳漿が滴り落ちている。
怪物が笛のような高い咆哮を上げると、鼓膜が震え、吐き気を催すほどの腐臭が漂った。
僕は石を握りしめ、心の中で呟く。
「来いよ……その腐った脳みそをぶち撒けてやる」
その夜、森は未知の獣たちの絶叫と、耳を裂くような遠吠えに包まれていた。
翌朝、飢えが僕を獣に変えた。
標的は「二頭の鹿」だ。
僕は拳大の石を握り、音もなく背後から忍び寄った。
石が脳天を直撃し、鹿が崩れ落ちる。
僕はその体に跨り、何度も、何度も、石を振り下ろした。
返り血が口に入り、生温かい鉄の味が感覚を研ぎ澄ませる。
頭部は肉片と化し、眼球が地面に転がった。
嫌悪感などない。
あるのは、運命への怒りと、支配する悦びだ。
僕は肉を剥ぎ、腱を弓の弦にし、骨を鋭利なナイフへと削り出した。
一ヶ月間、僕はただ殺すための技術を磨き、この空洞を要塞へと作り変えた。
精神はすでに、冷酷な狩人へと変貌していた。
移動の途中、道端で腐敗した騎士の遺体を見つけた。
僕はその骨ばった手から無慈悲に剣を奪い取り、血に汚れた鉄の手袋を自分のものにした。
その夜、一匹の狼が僕を試すように飛びかかってきた。
僕は木から飛び降り、空中で一閃した。
狼の首は一太刀で跳ね飛ばされ、噴き出す血を腕に浴びた。
僕はその生首を戦利品として鞄に詰め込んだ。
やがて、僕は「それ」に出会った。
長い耳を持つ美しい女が、僕に弓を向けていた。
言葉は通じず、彼女が僕の命を脅かす存在だと確信した瞬間、僕は躊躇なく踏み込んだ。
剣を振り抜くと、彼女の片腕が宙を舞い、鮮血が僕の顔を染めた。
さらに両足を斬り飛ばし、逃げ道を奪う。
血の海に沈み、苦悶に歪むその姿は、僕の目には酷く美しく映った。
だが、彼女の周囲に赤い光が溢れ出した。
欠損した肢体が、魔法のように再生していく。
彼女の名は「エリス」。
レクロンの地の主であり、人間を拒むエルフだった。
「僕はデルだ。異世界からの旅人さ」
僕は無感情に言い放つ。
僕たちは冷淡に情報を交換し、僕は彼女に背を向けた。
去り際に、僕は鞄から「プレゼント」を投げ捨てた。
まだ血の滴る狼の生首だ。
彼女の悲鳴を背に、僕は一度も振り返ることなく、次なる獲物を求めて歩き出した。
異世界ハンター @Dionik
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