第4話 推しに返り討ちにされました

相変わらず緊張感のある生活が続いている。


あの日、TVの向こうのと対面して以降も、奏は相変わらずだ。


私が窓辺に置いてあげた、人形用のおもちゃのソファに座って、ぽーっとして外を見てる。


そして時々、私の方を見て意地悪な質問をしてくる。

たぶん……本人は意地悪なんて思ってないんだろうけど。


あたふたしてる私を見て面白がってるんだろうな。


私の知ってる、本物の夜宮奏もそうだ。

ライブとかでファンに向かって、挑発的な台詞をよく投げかける。

もちろん、返ってくるのは黄色い悲鳴だ……。

……私も、そのひとりではあったのだけど。


私はと言えば、あの日以降、ささやかながら推し活を再開できた。

一度見られてしまえば、もう気にしない!

ささやかではあるけどね。


そして、いつもやられっぱなしなのがちょっと悔しくて。

今日こそ奏に質問攻撃してやろうと画策中。


聞きたいこと、聞きたいこと……。


???


なんだろう?



好きな食べ物――レモン

前にXで言ってた。


好きな飲み物――ブラックコーヒー

曲作る時飲んでるってメイキングで言ってた。


好きな場所――夜の海

誰もいないから、落ち着くってファンクラブ会報で言ってた。


好きな時間――夕暮れから夜になる黄昏どき

一瞬しかない、その絶妙な空色が好きって……言ってた。


やばい、だいたい知ってた……。


もっと踏み込んだ質問……出来るわけない。


好きな……好きな……?


「ねぇ」


いつものように奏が話しかけてくる。

ソファの背もたれから覗かせる顔はいつもの表情かおだ。


「何考えてるの?」


「えっ?」


灰色グレーの瞳がじーっと見つめてくる。


見透かされてる……っ?


そんな気がして、つい口が滑る。


「奏の好きな……」


そこまで無意識まで答えて、はっとする。


いつものしたり顔の奏がいた。


「へぇー?俺の好きな?」


「いやっ、そういうわけじゃなくてっ……」


「じゃあ、どういうわけ?」


ニヤッとした奏。


「さっきからさ、好きな…好きな…ってずーっと呟いてるよ?」


こ、声に出てた!?


恥ずかしすぎて悶絶しそう。


奏が楽しそうに見てる。


何がそんなに楽しいのよー!?


「ちがっくって……」


でも、何がって言えない。


「夕莉、俺に何聞きたいの?」


何って……。

困る。

だってそんなこと、考えたこともなかった。

私にとって推しは遠い存在。


私は思わず黙ってしまった。

これじゃ、奏に質問攻撃するつもりが、ただの自爆だ。


「個人的な質問、してみる?」


ニヤッと微笑って奏は爆弾投下。


「!?!?!?!?」


それはっ(ちょっとは聞きたいけど!)……違う。

聞いちゃいけないことだ。


意味深な顔で奏は続けた。


「冗談」


「夕莉はそんなに俺のコト知りたいの?」


もう一度微笑って奏は言った。


……やっぱり笑顔も好き……。


じゃなくって!

そんなの!!当たり前でしょーー!!


部屋に転がってるクッションに顔を押し付ける私を、奏は満足そうに見ていた。

そのクッションももちろん、NOCTISグッズなんだが。


はぁ、結局今日も奏に弄ばれて(?)しまった。


私の完全敗北です。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

推しのフィギュアが尊すぎて、推し活出来ません! 蒼空灯 @sorahi-aoi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ