カクヨムコンテスト11【短編】月と水の精霊⑤
越知鷹 京
手車に乗せた【黒田月】
※これまでのあらすじ
未来では、警察官で蒼太の不倫相手でもある
一方、気象学と情報工学に精通するお天気キャスター
禿瑛はギャンブルによる借金返済の為に、蒼太が開発した「AIの卵」を用いた誘拐を思い付く。この地域で有名なお祭り『水鏡の祭日』に合わせて動き始めた。
◇
理由は「国家機密の漏洩と殺人罪」。
期限は三週間。殺害方法は自由。痕跡を残さないこと。
「悪魔の定紋」の機能を使えば、痕跡を“なかったこと”にできる。
防犯カメラの映像は、すべて
彼は手元の古い写真を取り出した。藍染蒼太が知らぬ女性と並んで写っていた。その周りにいる数人の男女が笑っている。そこには若い日の自分もいた。
このチームで交わした約束が、この日が来ることを想定していた。だがそれは、もっと ずっと先 の事だと思っていた。約束とは――「必要ならば、危険な芽を摘む」。その言葉が、今の自分を縛っている。
「これも因果か……。それとも、この女の手車に乗せられたか?」
受諾の返信を作成した。文面は無く、冷徹で、余計な感情を含まない。【黒い月】を描いたイラストを貼り付けて送信ボタンを押すと、画面の向こうで誰かが彼の決断を喜んでいることを確信した。
◇
禿瑛は薄暗いホテルの一室でノートパソコンの画面をじっと見つめていた。
そこには探偵からの調査結果が記されていた。
藍染蒼太は既婚者であり、妻の名は瀑布彩子。遺体衛生保全士として働いており、子供をもうけていた。長女は小学6年生、長男は小学3年生。また、藍染蒼太はダミー会社で働いており、正確な所在は不明――。行動履歴の断片、目撃情報、最後に確認された住所の周辺に残る監視カメラの死角。探偵は慎重に「不確定」と注記していたが、禿瑛にとっては十分すぎる材料だった。
借金の重さが胸を締めつける。返済期日は刻一刻と近づき、取り立ての影は日に日に濃くなっていた。局の予報で誤差を出した日に、上司の冷たい視線を思い出すたびに、禿瑛の焦燥は増していった。だが今、目の前には出口がある。
一通の封筒を用意した。その中に、手紙と一枚の地図を入れた。
◇つづく
カクヨムコンテスト11【短編】月と水の精霊⑤ 越知鷹 京 @tasogaleyorimosirokimono
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