寒がりな彼女と、半分こした肉まん。

佐々木ぽんず@初投稿

帰り道のコンビニ

​「ふぇ、くしゅんっ!」

 校門を出た瞬間、雪菜が小さくくしゃみをした。

 マフラーに顔を半分埋めているけれど、赤くなった鼻先までは隠せていない。

「寒いね。今日は一段と冷えるよ」

「冷える、なんてレベルじゃないわよ。空気が氷みたい」

 雪菜は自分の肩を抱きしめるようにして、身体を丸める。


 家に向かう途中のコンビニから、ほかほかとした湯気が立ち上っているのが見えた。

「ねえ、悠馬。コンビニ寄らない?」

 彼女が僕のコートの袖を、ちょんちょんと引っ張った。


 誘われるままに入ったコンビニ。レジ横の什器の中で、ふっくらと蒸し上がった肉まんが僕らを誘惑していた。

「一個でいいわ。半分にしよ?」

 店を出て、薄暗くなった街灯の下。


 僕が半分に割った肉まんからは、真っ白な湯気が勢いよく舞い上がる。


​「はい、こっち。熱いから気をつけて」

「ありがと。あふ、あふっ、おいしい!」

 雪菜は火傷しそうなほど熱い肉まんを頬張り、幸せそうに目を細めた。

 さっきまで寒さで強張っていた彼女の表情が、ふんわりと解けていく。


​「悠馬の手、赤くなってる」

 ふいに雪菜が僕の手を覗き込んだ。

 肉まんを持っていない方の左手が、寒風にさらされて冷え切っていたらしい。

「 別に大丈夫だよ。男だし」

「よくない。ほら」

 彼女は自分のポケットから、僕の左手を奪い取るようにして引き寄せた。


 そのまま、彼女のコートの大きなポケットの中に、僕の手が導かれる。

「こうしてれば、温かいでしょ?」

 ポケットの中。僕の手を、彼女の小さな手がぎゅっと握りしめる。

 肉まんの熱よりもずっと鮮明で、ずっと優しい熱が、指先から全身に伝わってきた。

「雪菜、これじゃ、歩きにくいんじゃ」

「いいの。私が、寒いんだから。離さないでよ?」

​ 

雪菜は赤くなった顔をマフラーに深く沈め、僕の手をさらに強く握った。

 冬の夜道。冷たいはずの風は、今の僕たちには少しも届かなかった。

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