数をかぞえる簡単な仕事です。
南
初日の記録
この仕事について、特に書くことはない。
そう思ったので、記録を残すことにした。
募集要項にはこうあった。
数をかぞえる簡単なお仕事です。
経験不問。
日によって数える物は異なります。
それだけだった。
仕事内容の説明はほとんどなく、面接もなかった。
指定された日時に指定された場所へ行き、契約書に署名し、そのまま初日の作業に入った。
作業場所は倉庫の一角だった。
広くも狭くもなく、窓はない。
床に白いテープで区画が引かれており、その中に対象物が置かれている。
今日の対象は箱だった。
段ボール箱。
大きさも色もばらばらで、中身は入っていない。
特に気になる点はない。
数え方は簡単だ。
一つずつ確認し、心の中で数える。
記録用紙に合計数を書く。
それで終わり。
数え直しは原則不要。
間違えたと思っても、最初の数を採用する。
理由は「作業効率のため」と説明された。
最初は十個ほどだと思った。
次に十五。
二十を超えたあたりで、思っていたより多いと感じた。
だが、特に問題はなかった。
最終的に数は二十三だった。
記録用紙に「23」と書き、提出した。
提出時、担当者は数を確認しなかった。
用紙を受け取り、軽く目を通しただけで、「お疲れさまでした」と言った。
帰り際、気になって一つ質問をした。
「数が合わなかった場合は、どうすればいいですか」
担当者は少し考えてから、こう答えた。
「合わなかった、ということは起きません」
それ以上の説明はなかった。
その日はそれで終わった。
帰宅後、特に体調の変化もない。
疲れもなく、夢も見なかった。
記録を残している理由は、ただそれだけだ。
仕事は簡単で、問題はない。
明日は、何を数えるのだろう。
募集要項の最後に、小さくこう書いてあったことを思い出す。
※二十四個の場合は、規程があります。
今日は違った。
だから、何も起きなかった。
たぶん。
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数をかぞえる簡単な仕事です。 南 @minami_horror
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