紅き炎は王を選ぶ――王とは血か、覚悟か。それとも炎か
しゃぼの
第1章「ガラン動乱 ――結界崩壊」
第1話「結界崩壊 ――白銀の竜、来襲」
灼熱の砂礫を踏みしめるようにそびえ立つガラン王国の王都シャリシャ。その威容を誇る王宮は今、紅蓮の炎に包まれようとしていた。押し寄せる熱波が、第一王子ファイサルの焦燥の色を濃くする。父王ジャイスに危機が迫っている。
王都を護る堅牢な結界が、何者かの手によって破られたのだ。外部からの破壊――その事実に、ファイサルの喉はひくりと鳴った。結界術において父王ジャイスの右に出る者は存在しないというのに。
王宮を焼き払う放火は、王都全体を混乱させるための陽動に過ぎない。侵入経路を慎重に探る時間など既になく、一刻も早く父の元へ駆けつけねばならない。ならば、賊の真の狙いは、間違いなく父王ジャイスその人であろう。
ファイサルは、燃え盛る王宮内部の螺旋階段を、一瞬の躊躇もなく全速力で駆け上がった。最後の踊り場から最上階へと飛び跳ねる。
屋根が露な開けた玉座の間。燃え盛る炎の光が、王の影を不気味に揺らめかせる。ガラン王ジャイスは、背後から響く息子の焦燥した足音を聞きつけると、振り返ることもなく静かに呟いた。
「来たか」
ファイサルが玉座の間に辿り着くと、ジャイスは静かに天を指し示した。
「敵は遥か上空だ」
見上げれば、月よりも遥かに高い夜空を舞う、白銀に輝く巨大な龍の姿があった。その巨体から放たれる業火の球が、まるで流星群のようにシャリシャの結界へと降り注ぎ、強固な防御壁を容赦なく叩き壊そうとしていた。
「力押しとは。実に品がない」
ジャイスは息子の前で平静を装ってみせる。しかし、その瞳の奥には、すでに覚悟の色が宿っていた。王は決然とした表情で叫んだ。
「半人前のお前の手を借りるぞ! ファイサル!」
「父上! 一体何をなさるおつもりですか!」
ファイサルの背筋に、氷のような戦慄が走った。
「最大の防御は、最大の攻撃となる!」
ジャイスは両手を胸の前で組み合わせると、その掌の間に眩いばかりの光球を創り出し、全身全霊を込めて絶叫した。
「ファイサル! ワシが全ての魔導を奴にぶつける! その一瞬のシャリシャはお前が守れ!!」
ファイサルは目を見開き、一瞬で腰を落とし、片膝を床に付けた。瞬間、ジャイスの掌から放たれた凄まじいフレアが、夜空を焦がし、白銀の竜へと一直線に叩きつけられた。
――その光は、ガラン王国の歴史を大きく揺るがす、始まりの炎だった。
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