大好きだったよ

@anirowaif

第1話 大好きだったよ



晴れ渡った青空に一筋の光が流れ落ちた。


そして、世界は変わり果てた。

【5月23日】


私の名前は千和(ちわ)。

テレビや新聞のような情報メディアは機能せず、なにが起きているのかもわからないまま5日ほど過ぎた。

たくさんの人が死んだ。ただ倒れている人もいれば、なにかに食べられたような人もいる。

死に方はもう様々で、数えきれないほどの死の形が私たちの周りにあった。

いつ、私たちもそこの仲間入りするかわからないので、私たちが生きたせめてもの証として日記を記すことにする。

【5月24日】


いま、私の傍にいるのは幼馴染の二人。

一人は沙也加(さやか)、もう一人は真奈(まな)。

沙也加は活発な女の子で、真奈は大人しいお人形さんのような子だ。

本来ならば、この不可思議な現象についてわかったことを綴るべきなのだろうが、必ずしもなにか変化があるわけではない。

そういう空白の時間くらいは、私の大切な人たちについて語ることを許してほしい。

【5月25日】


町はもはや町として機能しておらず、先週までは通っていた電気は一切通じず、金という金が、民を守る権力は、もはや機能しておらず。

私たちを含む生存者たちはこぞって食糧を求め、荒らしまわり、日々の空腹を凌ぐ日々に追われていた。

どうしてこんなことになってしまったのか、未だになにもわからない。


【5月26日】

この異様な状況に置かれてから1週間程度が経過し、ようやく身辺の関係者の整理ができた。

結論から述べる。私たちの家族や祖父母、親戚やクラスメイト達はもう誰もいなかった。

死んでいる人もいれば、自我が消えてしまった人、身体の原型を留めず変容してしまった人もいる。

その差はなんなのか。なぜ私たちは無事なのか。いくら考えても答えはでなかった。


【5月27日】

不可思議なことに気がついた。真奈が、死んでしまった人たちを埋葬してあげたいと言い出したものの、殆ど死体は無かった。あるのは、明らかに誰かが着ていた衣類が無造作に道ゆく道に置き去りにされているだけ。

沙也加はその痕跡から、死んだ人は水みたいに溶けてしまうんじゃと推測するものの、ちゃんと転がっている死体もあった。

意味がわからなかったが、なんとなくこのまま街にいるのは不気味に思えたので、私たちは使えそうなモノだけを持って、山へと移動することにした。


【5月28日】

不思議なことに山の植物や魚、動物たちにはさしたる変化は無かったようだ。何故だかわからないが、食糧に関してはさして問題はなさそうだ。


【5月31日】

この記録を読んでいる方へ。

書き始めてから1週間も経たないうちに報告が途切れてしまってごめんなさい。

昨日まで三人で拠点を作っていましたが、そのせいで疲れて書き忘れていました。明日からはちゃんと報告します。

【6月6日】

信じられないことが起きた。

この日記を記す5日前、真奈は死んだが翌日に生き返った。

5日前の朝、私たちが目を覚ますと、真奈は眠ったかのように息を引き取っていた。

私と沙也加は泣きわめきなんども縋りついた。けれど真奈はピクリとも動かなかった。

私と沙也加はただ悲しみに暮れて真奈に寄り添いそのまま朝まで縋りついていた。

翌日の朝、真奈は目を覚まし息を吹き返した。

私も沙也加も困惑したが、彼女が生き返ったことをひたすらに喜んだ。

ただ、真奈はなぜか災厄の間の記憶を失っていた。

今までの記憶はあり、乱れもなかったのだが、あの災厄の日からの記憶が全くないのだ。

だから、私たちの知り合いが皆死んでいたことを伝えれば、真奈はやはり泣き出してしまい。

今日のほとんどは、彼女に現状を説明することで終わってしまった。

どうか前のように笑って欲しい。


【6月8日】
真奈が落ち着いてきたので、報告を再開。


真奈が生き返った。

これが何を意味するのか、まだわからない。

でも、これは普通のことじゃない。

この世界で、何か特別なことが起き始めている。


それが良いことなのか、悪いことなのか、まだわからない。

でも、真奈が生きている。沙也加と私と真奈の三人でいられる。

それだけで、私はここでおわとにかくよかった。




【6月9日】

私の身体にも異変がおきていた。とはいっても、決して悪いことでなく、この環境においてはむしろ良いことだが。

気づいたのは、沙也加と真奈と一緒に山道を探索している時だった。

私はあまり身体が強くなく、病気もしがちで、運動神経も悪かった。

なので、普段は彼女たちが私に合わせて歩いてくれていたのだが、今は気がつけば彼女たちが私に合わせようと息を切らしている始末だ。

それだけじゃない。道を塞ぐ倒木を3人でどかそうとしたら、私一人で持ち上がってしまい、木にしがみつき浮いた二人は目をパチクリと瞬かせていた。

そしてそれは身体能力の話だけではなく。

食糧が底を尽きかけ、2日ほどほとんど絶食だった際、二人は空腹で辛そうだったが私はなんともなかった。

運よく見つけた木の実を二人に与え、私は強がりで道端の石を食べたら普通に食べれた。

アスファルトも口に入れてみた。普通に食べれた。

どうやら私は身体が異様に強くなってしまったらしい。

よかった。これなら二人をずっと守っていけるかもしれない。

真奈の蘇生、私の身体能力の増強という異常さを目の当たりにした沙也加はあたしもなんかないかな~、と羨まし気にぼやいていた。


(略)


【6月20日】


この日記は、もともと他の生存者が読むことを想定して書いていた。

でももうそんなことはどうでもいい。

この10日ほどで試したが、どうやら私は何も食べなくても眠らなくても死なないらしい。アクシデントで大木が倒れ込み下敷きになっても骨の一つも折れることはなくなった。ロクな痛みもなかった。

つまり私が死ぬことは無くなったのだ。

だから「誰かのために」なんて残す必要はない。ここからは私のための日記を記そう。


【6月21日】


報告でなければ何を書いてもいいだろう。

12日、真奈は私の実験に付き合って断食すると言い始めた。私が辛い目に遭っていると思い、それなら自分も共有して辛さを和らげようとした。そんな真奈に沙也加が「辛くないかどうかを試すだけでしょうが」、と嗜めると早まった自分に顔を赤くしてしまった。私と沙也加はそんな真奈が可愛くて思わず笑ってしまった。

13日と14日は特になにもなかった。そういう日もあるだろうとは思っていたが、実際にあるとなんだか残念だ。

15日はとにかく動いてみた。二人を放り上げてキャッチしたり、二人を抱えながら木々を飛び回ってみたり。沙也加は楽しそうだったけど、真奈は目をぐるぐる回して悲鳴をあげっぱなしだった。流石にはしゃぎすぎたと謝ったけど、真奈は少しムッとしてその夜はあまり口を聞いてくれなかった。その間は沙也加が真奈を弄ってくれていたので、殺伐とはしていなかったが。

16日、真奈の許しを得るために、せっかく山にいるんだから頂上で星空を見たいという真奈の要望で、三人で山の頂上へ。星空がとても綺麗で感無量だった。きっと、普通に暮らしていたらあんな夜遅くに山の頂上へ登ることも無かったので、三人でこの景色が見れたのはこの世界になった功績かもしれない。

なんて、こんなことを書いていると知られたら二人に怒られそうなので、なるべく中身は見られないようにしておこう。


【6月22日】

昨日、見られないようにしておこうと思った矢先に見つかってしまった。

怒られはしなかったけど、真奈には「千和ちゃんハシャイじゃってるねえ」と笑われたり、沙也加に「あんたあたしたちのこと好きすぎでしょ!」とからかわれたり。恥ずかしすぎて死にそうになった。

でも、二人とも日記をつけることには反対しなかった。むしろ、気が向いた時だけでも着けてくれると、私たちも思い出を残せるからと褒めてくれた。なので日記は続けることにする。




(略)


【8月10日】

今日は危なかった。少し二人と離れていた時に、熊と遭遇した。気が立っていたのか、出会い頭に爪で殴られた。私は無傷で追い払うことはできたが、もしも二人が出会っていたらと思うとゾッとした。


【8月12日】

熊を殺した。


【8月13日】

書けない。

あの鳴き声が頭から離れない。


【8月14日】

沙也加と真奈が何度も声をかけてくれる。

でも、私は大丈夫と返すことしかできない。

いまは何も考えたくない。


【8月15日】

今日は沙也加の提案で、三人でキャンプファイヤーをした。

こんな時に呑気なことをと思わなくもなかったけれど、ずっと気を張っていて辛いのは私も同じだった。

林間学修とも時期はズレていたけれど、「山の夏夜はやっぱこれだよね」という沙也加の言葉に私と真奈は笑い合い、一緒に火を囲み楽しんだ。

終わり際、沙也加と真奈が助けてくれてありがとうねと言ってくれた。たぶん、この三日間ずっと言ってくれていたと思うけど、ようやく素直に受け取れたのかな。


(略)


【10月20日】

前までは紅葉狩りだなんて世間は賑わっていたけれど、こうも周りが紅葉だらけだと有り難みが無くなってしまう。最初は目を輝かせていた真奈も、もう見飽きてしまったのかあまり話に出さなくなった。慣れって怖いね。


【10月25日】

せっかく落ち葉がたくさんあるので、秋らしく芋を焼いた。

拾ってきた芋はちょうど三本あったので、私も食べた。ホクホクとした食感と口の中に広がる甘さに思わず頬が緩んだ。食べなくても死なないのとそれでも食べたいと思うのは両立するのです。


(略)


【11月6日】

早めの雪が降ってきた。

突然の寒さに慌てる二人と比べて私はなんともなかったけれど、二人が当たり前に感じてることを感じられないのはちょっぴり寂しかったりする。ただ問題なく動けるのを頼りにしてもらえるのは嬉しいので差し引きで言えばプラスなので良し!


(略)


【11月16日】

雪が本格的に積もってきた。

せっかくなのでと三人で雪で遊んだ。

私は普通の雪だるま、真奈は兎を。

沙也加はあろうことか等身大の私たちをかなり精密に作っていた。

嬉しさ以上にどうやっで作ったのそれという驚きが私も真奈も隠せなかった。沙也加はそんな私たちを見て得意げに笑っていた。



(略)


【12月1日】

真奈がまた死んでしまった。こんな中でこの日記を書けるのは沙也加のおかげだ。彼女は最初に真奈が死んだ時よりも冷静に動き、また真奈は生き返ってくれるかもしれないと励まして、私を落ち着かせるためにもこの日記を着けるように言ってくれた。

真奈、お願い、また笑顔を見せて


【12月2日】

真奈の蘇生を確認。本当に良かった。

やっぱり沙也加はすごい。

私は慌てるだけで何もできなかったのに。


【12月3日】

やはり真奈は災厄の後の記憶を何も覚えていなかった。

そんなことよりまた生きかえってくれたのが嬉しかったが、今まで過ごしてきた思い出が真奈から無くなってしまったのが悲しくないといえば嘘になる。

真奈はそんな私の想いを感じ取ってしまったのか謝ってきたけれど、沙也加はすぐにこの日記を見せて「思い出はまた作ればいいよ!あたしら何度だって付き合うし!」と笑い飛ばしてみせた。私も強く頷いた。

真奈は謝罪をやめて、代わりにありがとうと言ってくれた。やっぱりお礼を言われる方が嬉しいや。


(略)

【1月1日】

あけましておめでとう、なんてこんな状況で言うのもなんだけど、それでも私たちはそう挨拶しあった。みんな家族も友達もいなくなってしまったけれど、それでもせめてこの三人は離れたくないと願った。



(略)


【2月27日】

沙也加が死んだ。2週間くらい前だった。気持ちの整理のため、詳細は後程書くのを許してほしい。

【3月6日】

沙也加が死んだのは、決して特別なことじゃなかった。

病気。たぶん、このあまりよくない空気を吸ってきたぶんのツケがまわってきたんだと思う。

沙也加は激しく咳き込みながらもずっと笑顔を絶やさず、「死んだって、あたしも真奈みたいに生き返るから大丈夫だって!」と私たちを鼓舞し続けた。

でも、今わの際には涙を流し、私たちに何度も何度も謝り続けていた。

私には「あたしの代わりに真奈を守り続けてほしい」と頼み真奈には「千和が無理しないように支えてあげて」と激励し。

最期に、私たち二人に本当にごめんねと謝り息を引き取った。

私たちは彼女が生き返ることを願いずっと縋り続けた。

真奈が疲労で倒れても、彼女の看病をしつつも、私は沙也加を抱きしめ続けた。

小さなものが蠢き始めたとき、ようやく彼女が戻ってこないと理解した。

これからはもう、私と真奈だけでこの世界で生きていくしかないのだ。


(略)

【6月2日】

真奈が死んだが、また翌日に生き返った。

また、彼女は災厄の日からの記憶を失い、沙也加や親族のことを伝えれば、その喪失に嘆き涙した。

彼女がこうなるのは三度目だが、やはり私の心臓は止まりそうだった。沙也加みたいにうまく慰められたかな?

もう大切な人にはいなくなってほしくない。


【6月5日】

二人で日本をまわることにした。

このままずっとここに留まっていてもどうしようもない。もしかしたら私たちのように隠れて生き残っている人たちもいるかもしれない。それが私たちの話し合った答えだった。


【6月7日】

富士山を起点に、周囲を探索してみた。

真奈はその絶景に感嘆を漏らしていたけれど、私はずっと山にいたからか富士山に辿り着いてもさほど感動は無かった。周囲の動物園や温泉施設などを巡ってみたが、やはりというべきか人がいなければ施設の維持なんてできるはずもなく。

温泉にはただの冷めた水が貼ってあるだけで、動物園からはとっくに動物たちはいなくなっていた。

見慣れない街並みを歩く楽しさはある。ただ、沙也加がいなくなった寂しさは私たちの間から消えなかった。


【6月8日】

隣の県に行ってみた。やはり人の気配はなく、寂れた景色が広がっているだけ。

どんよりと薄暗く寂れた街並みは、私たちが密かに抱いてた旅の楽しみを無くしていく。

真奈が「旅って色んな人たちのおかげで楽しかったんだね」と溢した言葉に、私は頷くことしかできなかった。



【7月8日】

息抜きに浜辺でスイカ割りをした。

二人だけなのでどうしても寂しさは消えなかったが、この乾いた旅路の中で久しぶりに楽しめたと思う。





【9月1日】

前回この日記に記してから三か月経った。

とりあえず日本は一回り見てきた。

結局、なぜ世界がこうなったのか、どうすれば元に戻れるのかなにもわからないし、誰に会うこともなかった。

今はただ生きよう。そうすれば、なにか見えてくるかもしれない。


【12月2日】

また真奈が死んで、翌日に生き返った。

記憶も消えていたので、再び伝え、彼女は悲しんだ。

四度目となれば多少は慣れてきたのか、私の緊張も幾分かは解れていた気がする。


【12月4日】

日本に手がかりがないのなら海外はどうだろうか。真奈のその言葉に私も同意した。

公共機関はすべて止まっているため、自分たちで海を渡るしかない。

幸い、船は手つかずのものがいくらでもあるので、あとは操縦だけだ。

当然、免許など持っていないし、基礎知識すらないので、図書館の本と説明書を見比べながら徐々に操縦に慣れていこう。


【12月5日】

早速準備に取りかかったが、ものすごく難しい。

ボタンをどうすればいいか、ハンドルをどの程度傾ければいいのか、この専門用語はどう扱うのか。全てを手探りでやらなければならず、混乱するばかり。手本や先生がいないというのはここまで苦労するというのか、強く思い知らされた。



【3月10日】

二人で勉強を続け、どうにかそれなりの形になったと思う。まだスムーズに動かせるわけではないが、それでも転覆させずに操縦できるようになっただけ進展だろう。私が集中するためとはいえ、真奈との時間が限られるのが寂しいので早く操縦をモノにしたいものだ。




【5月30日】

半年近くかけてようやく操縦をものにできた。

明日はいよいよ海外だ。

明日に備えて今日は寝よう。

【6月1日】

朝起きたら真奈が死んでいた。

もう五回目になるので、さすがに泣き叫ぶことはなかったし、冷静に対処することができた。

彼女の寝顔を見ながらふと思う。

もしも彼女が目を覚ますまでに私が死んでしまったらどうなるんだろう。

こんな意味わからない状況で、世界で、独り残されたら、真奈はどうなってしまうのだろう。

想像するだけでも恐ろしい。

沙也加は私に真奈を守り続けてほしいと頼んだが、それは頼まれるまでもないことだ。

私は絶対に友達を独りにはさせない。


【6月2日】

真奈が目を覚まし、例のごとく伝え、彼女は泣いた。

この日記を読み返して気が付いたのだが、真奈が死んで蘇る日はだいたい半年刻みだ。

既に五度目なので、なにか対策がうてればいいのだが。


【6月3日】

真奈が落ち着いたのを見計らって、共に出航する準備を始めた。

海外はどうなっているのか、正直、少しだけワクワクしている。



【6月4日】

隣の国に辿り着いた。

到着初日でまださほどまわれていないが、現状見た限りだと私たちの国とさほど変わらない。

真奈は「明日はきっと誰か見つかるよ」と言って微笑んでくれた。私も、もう少し前向きになろうと思い直した。




【11月30日】

海外の国に着いてからもうすぐ半年になる。

結局、私たちの着いた国も日本とほとんど変わりはなかった。

まだまわれたのはこの国だけだが、恐らくどこも同じだろうし、仮に違うとしても、交通手段が無いためこれ以上の距離を渡航するのは難しい。

どうせなら慣れた日本の方がいいと思い、近々出航しようと思う。なにごともなければ、だが。


【12月1日】

やはり真奈は死んだ。

予想した通りだ。渡航するのは彼女が目を覚ましてからにしよう。


【12月2日】

目を覚ました真奈に事情を説明し、彼女が泣き止むのを待つ。

6度目となるこのやり取りに、私は最初ほど感情を動かされることはなくなっていた。

彼女の死になにも感じなくなる日がくるのでは、と少し恐ろしくなった。



【6月2日】

真奈の蘇生を確認。


(略)


【12月1日】

真奈が死んだ。


【12月2日】

真奈の蘇生を確認。


(略)


【6月1日】

真奈が死んだ。


【6月2日】

真奈の蘇生を確認。


(略)


【11月29日】

この世界で調べられるものはすべて調べつくしたが、わかることはなにひとつなかった。

もう私は疲れた。あとは真奈と共に生きることだけを考えよう。


【11月30日】

昔、三人で遊んだゲームセンターに寄ってみた。真奈と私は最初こそ懐かしくて笑い合っていたものの、すぐに寂しくなってきたのでやめた。

沙也加がい昔を振り返ると辛くなるからだろう。


【12月1日】

真奈が死んだ。







また、日記を書く。
もはや惰性として書いているに過ぎないのに、誰に読ませるものでもないのに、なぜだか辞められない。


【12月1日】

真奈が死んだ。

もう何度目かわからない。

もう彼女の反応は分かり尽くしている。

それくらいに、彼女が戻ってくるのを見てきているから。


ーーー少し、ペン先を押す力が強まったかもしれない


真奈。あなたはまた泣くんだよね。当たり前だよね、だって何にも覚えていないんだから。大丈夫だよ、仕方のないことなのはわかってるから。


ーーーほんのちょっとだけ、目元がピクリと動いた気がした。


あなたが悪いだなんて全然思ってない。思うわけがない。私たち、友達なんだから。


ーーー小さく、三文字分だけ口が動いたかな。きっと、言っちゃいけないような単語の形で。


だから、私のことなんて気にしないでいいからね。身体もあなたよりも丈夫なんだし。疲れたら休んでいいんだからね。ほんとだよ?


ーーーたぶん、おんなじことを何度も言ってたのかな。最低だな、私


だから、待ってるからね?


ーーー...気持ち悪い




12月2日


真奈の蘇生を確認。


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