小さな瞳

くすのきさくら

引き継がれるタッチ

 タッチ。


 それは音がするかしないかの軽いタッチ。

 必死に手を伸ばす小さな手に軽くタッチする。

 ガタガタと騒音がする中でのタッチ。

 ほとんどの人はそのタッチを見ることはないだろう。

 同時に大きな車輪がガタガタと通過していくためだ。

 しかし彼は昔の自分を思い出しながら小さな手を見つければ必ず手を伸ばすのだった。


 レンガ造りの街並みが綺麗な小さな田舎町。

 その町のはずれで大きな車輪の主。蒸気機関車がちょうど走り出したところだ。

 後ろには何両もの客車を引いている。

 都市部へと向かう若者たちを乗せた蒸気機関車に老若男女問わず多くの人がその力強く走り出す機関車に手を振っている。

 とくにこの場所は線路と駅に柵などが一切ないため蒸気機関車ギリギリまで人が来ている。

 そのため客車内からも見送りに来た人と最後の挨拶をしようと必死に窓から身体を乗り出し答えている人もいる。

 

 そんな中。その大きな蒸気機関車を運転している運転手を見つめる小さな瞳が稀にある。

 その瞳は周りの人達に負けずとキラキラ輝いている。

 中にはまだ抱っこされているような小さな瞳の場合もあるが。その手はしっかり伸ばされている。

 

 その瞳を見つけると彼は手を伸ばす。

 そして軽く触れる優しいタッチをしていく。


 軽く手と手が触れるとさらに小さな瞳が輝く。

 そしてあっという間に小さな瞳は後ろへと遠ざかっていく。

 今どのような目をしているのかは見ることが出来ない。

 しかし昔を思い出す。


 その姿は受け継がれる。

 

 私が昔そうだったように――。



  


 了

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小さな瞳 くすのきさくら @yu24meteora

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