巨悪が再び立ち上がる時

まっくろえんぴつ

序章 巨悪が倒れる時

第1話 疑問を抱いた少年

 テレビの中で正義のヒーローが悪の組織の怪人たちを次々と倒している。いつもの展開だ。子供たちは歓声を上げ、悪者が倒されることに喜びを感じる。


 だが、テレビを見ていた少年は違った。



「なぜ正義は勝つの?」



 7歳の少年は、テレビに映るヒーロー番組を見ながら母に尋ねた。



「それは正義が正しいからよ」



 母は優しく答えた。だが少年の疑問は深まるばかりだった。



「悪が勝ってはいけないの?」



 母は困ったように笑った。



「変なことを聞く子ね。悪が勝ったら、みんなが不幸になるでしょう?」



 少年は黙り込んだ。母の答えは正しいのだろう。大人たちは皆、そう言うに違いない。だが——本当にそうなのだろうか?


 画面の中で、悪の組織のボスが必死に抵抗している。彼には彼なりの目的があるはずだ。信念があるはずだ。なのにヒーローは容赦なくそれを粉砕する。そして世界中の人々は歓喜する。


 正義だからという曖昧な理由だけで正義が勝ってしまう。



(……なんでなの?)



 少年は納得できなかった。なぜ悪は負けなければならないのか。なぜ正義だけが勝利を許されるのか。力が同じなら、勝つのは運や状況次第のはずだ。なのに物語の中では必ず正義が勝つ。


 それは——本当に「正しい」ことなのだろうか?


 その夜、少年は一人で考え続けた。世界は正義と悪に分かれている。そしてルールがある。「正義は必ず勝つ」というルールが。でも、そのルールを作ったのは誰だ? それは言うまでもなく正義側だ。勝者が敗者を定義し、善悪を決める。



「つまり……正義というのは、勝った者が名乗る称号に過ぎないんだ」



 少年の心に、ある種の反骨心が芽生えた。世界が決めたルールに対する疑問。そして——それを覆してみたいという、危険な好奇心。


 この疑問は、少年の心に深く根を下ろした。そして何年経っても決して消えることはなかった。むしろ年月を重ねるごとにその疑問は彼の中で膨れ上がり、やがて一つの野望へと姿を変えていくことになる。

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