平凡な事務官は、騎士団長を甘やかしたい

@96maggy

第1話 平凡な事務官 ルッツ

平凡な事務官は、騎士団長を甘やかしたい



人には、向き不向きと言うものがある。

僕には、恋愛の適性が無かった。

人を可愛いとか愛おしいと思った事がなかった。

美醜の面で整っていて『可愛い』とかは分かる。

美的感覚は普通にあるからね。

小さな生き物を見ても『可愛い』とは思わない。

触ったら壊しそうとか、どう動くか分からなくて怖いの方が勝った。


少なくとも…彼に出会うまでは、そうだった。


僕の太腿に頭を乗せて寝転ぶ彼の頭をゆっくり撫でる。

嬉しそうに、くすぐったそうに笑う彼に「可愛い」と囁けば、ボン!と音がしそうなほど真っ赤になって見上げてくる。

「ふふ、真っ赤だ。」

少し熱い頬を撫でる。

彼の凛々しい目が潤み、引き結んでいた唇が震える。

「どうしたの?」

と聞けば言葉にならないのか視線を彷徨わすだけ。

ゆっくり顔を近づければギュッと目を瞑られる。

彼の凛々しく高い鼻先をカプリと喰む。

「っ!?」

パチリと開いた目の驚きの色を見て

「そんな顔してると…食べちゃうよ?」

口元が緩むのを抑えられ無かった。




僕が本当の彼を知ったのは、資料室で調べ物をしていた彼を偶然手伝ったあの日。


落雷の轟音に彼の呼吸が乱れ、自分の腕を強く握っていた。暗くて良く見えないが彼の顔色が悪い。


気づけば身体が動いていた。


椅子に座る彼を胸に抱きしめ「大丈夫…僕がいるよ。怖くない。」と背をあやすように叩いた。


ゆっくりと腕を掴んでいた手が動き背に回り、服を掴まれる。


体格は大きいのに小さな子みたいだ。


しばらくして、落ち着いたのか、縋りつく手が緩み、胸元から頭が離れる。


「落ち着きましたか?団長。」


「…ああ。みっともない所を見せたな。ルッツ事務官。」


「フフッ、団長の人間味があるトコを見れて得した気分ですよ?」


「ぐっ…こ、この事は、どうか、他言無用で頼む。」


「当たり前じゃないですか」と返せば彼は不安そうな顔で見上げてくる。


「貴方のこんな可愛い顔、他の奴に見せてたまるもんですか。」


彼の頬を撫でてそう囁けば、彼の頬が真っ赤になる。


「…なっ、なに、をっ」


百戦錬磨、騎士中の騎士、武人の鑑。そう褒め称えられる彼の、こんな初心な姿が___どうしようもなく、愛おしい。


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