俺の手どこいった?
まこわり
第1話 占い師に手相を見てもらった日と翌日
ある夜、 役者志望の青年、
「ちょっと、そこのお兄さん、手相見せとくれよ」
看板には「ニトの手相占い 一回1,000円」と書いてある。
「俺ですか? でも俺、役者の卵ですから金持ってませんよ」
「いいから、サービスで見てあげるから。なんか、あんたの手相、すっごく珍しい気がしてね」
占い師のニトは
「やっぱりあんた、良い手相してるね。これは『幸福を招き、不幸を
「じゃあ、1,000円ください」
「調子に乗るんじゃないよ!」
* * *
翌日、
男は、顔を洗うときに違和感を感じた。しかし、その違和感がどこから来るのかわからなかった。とりあえず、歯磨きをしようと左手に歯ブラシを持ち、右手で歯磨き粉をつけようとすると、
(あれ? 俺の左手の親指、こんなに
(病院? しかし、急に手が毛深くなるなんて病気聞いたことがない。こんな未知の病気、医者が診てわかるのか? そもそも、病気なのか??)
(こんなゴツゴツした手は、俺の手じゃない……これが『幸福を招き、不幸を
* * *
同日、別の場所で一人の男が目を覚ました。
ワンルームの小ぎれいなアパート、パジャマ代わりのタンクトップからは胸毛がはみ出ていた。そればかりか、腕も
男は獣のように鋭い目つきで起き上がり、布団の上に座った。
「今日こそ……パワハラ上司を殺して、俺は自由になる……。しかし、日本の警察は優秀だ。どうせすぐに捕まるだろう。だから、捕まるまでの間旅に出る。これまで行けなかった場所に行くんだ……」
血を見るのが嫌いな男は、そのパワハラ上司の首を絞めて殺そうと考えていた。枕を上司の首に見立てて、両手で絞める仕草をしようとしたところ、左手に違和感が。
「ない……?」
男の左手の手首から先が無くなっていた。
痛みは全くないし、血が出た形跡もない。男はその手首の断面を見たが、
「一体どういうことだ?」
自分の左手が無くなったという事実を知って、男は気分が悪くなって、そのまま寝込んでしまった。
しばらくたつと、電話が鳴って男は起こされた。
スマホの画面に表示された名前はパワハラ上司だった。男はおそるおそる電話に出た。
「おい、どうした? いつもなら出勤している時間じゃないのか?」
「すいません……体調が悪くて、今日は行けそうにありません……」
「なに! 仕事の疲れが出たのか!? まあいい、今日はゆっくり休んでいろ! 明日も体調が治らんようだったら休め! 休養は大事だ! その代わり、回復したらみっちり仕事してもらうからな! それじゃあ、お大事に」
男は、つぶやいた。
「体調不良の俺を疑うことなく心配してくれた。パワハラじゃなくて、ただ熱血漢なだけか?」
会社を休んだ男は、そのまま次の日を迎えると、左手首は元に戻っていた。そして、上司への殺意は消えていた。
次の更新予定
2026年1月14日 19:06 毎日 06:11
俺の手どこいった? まこわり @makowari
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