第5話 小さな勝利、大きな敗北
森を抜けたカイル・ヴェルグレンとライナ・セリスは
小さな町に辿り着いた。旅の途中で初めて
見る人の集まる場所。少年の胸は少し高鳴る。
「ここで情報を集められるかも」
ライナの言葉に、カイルは頷いた。
剣を握る手に力が入る。
この町で自分たちの力を試す機会を得ることになる。
町は活気にあふれ、商人が声を上げ、
子供たちが走り回る。しかし、危険も潜んでいた。
盗賊や小規模の魔獣が、町の外れで報告されていたのだ。
「まずは簡単な依頼から始めよう」
ライナは少年の肩を軽く叩いた。
「小さな勝利を積み重ねることが大切よ」
最初の依頼は、野生の魔獣の駆除。
体長は人間ほどだが、牙と爪は鋭い。
町人たちは怯え、報酬もわずか。
カイルは剣を握り、ライナの指示に従って戦う。
魔獣は素早く襲いかかるが、ライナの魔法が
視線を制し、少年は攻撃の隙を突く。
一撃目は外れるも、二撃目で深く刺さる。
魔獣は後退し、最後の力を振り絞って襲いかかるが、
ライナの氷の刃が体を貫く。
「やった……!」
カイルは息を切らしながらも、初めて自分の力で
勝利を掴んだ感覚を味わった。
町人たちの歓声が、彼の心を温める。
しかし、喜びも束の間。町に現れたのは
傭兵団長・グロスだった。体格は大きく、
鋼鉄の鎧に身を包んでいる。
「噂の少年か……」
その声は低く響き、威圧感を放つ。
「俺たちは……」
カイルは戦意を燃やす。剣を握り直す。
グロスは戦闘のプロだ。動きは早く、力は絶大。
カイルは攻撃を避けるが、何度も斬撃を弾かれる。
「これは……勝てないかもしれない」
少年の胸に焦りが生まれる。
ライナも魔法を放つが、グロスは冷静に回避し、
反撃を仕掛けてくる。剣の一撃がカイルをかすめ、
肩に痛みが走る。
「まだ……諦めない!」
カイルは叫び、全力で剣を振るう。
しかし、グロスの一撃に弾き飛ばされ、地面に倒れる。
敗北の衝撃が胸に響く。これまでの小さな勝利は、
本物の力を持つ敵の前では通用しなかった。
少年は初めて、力の差を痛感する。
「大丈夫?」ライナが駆け寄る。
少年は息を荒くしながらも、立ち上がろうとする。
「……負けた。けど……負けたままじゃ終われない」
グロスは静かに立ち去る。
勝利は与えられず、悔しさだけが残った。
だが、その悔しさが少年の心に火を灯す。
「俺は、強くなる」
カイルは剣を握り直し、心に決意を刻む。
小さな勝利と大きな敗北を経験し、
少年は一歩大きく成長したのだ。
町を後にする二人。夕陽が草原を赤く染める。
カイルの視線は遠く、未知の世界を見据えていた。
「次は……もっと強くなる」
少年は心に誓い、歩を進める。
戦いは終わらない。勝利も敗北も、
すべてが成長への道しるべだ。
旅は続く。未知の敵、未知の試練、
そして新たな仲間との出会い――
すべてが、少年を世界の頂へと導く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます