ハンド☆コレクター

楠本恵士

猟奇的な手首収集事件

「公園で五人目の被害者です! また、手首を切断されて持ち去られました!」

 警察署の【連続猟奇犯罪捜査本部】に、被害者の一報が入ったのは、まだ薄暗い早朝の四時を少し過ぎた頃だった。


「公園をジョギングしていた男性が、茂みの中にうつ伏せに倒れて、死亡している被害者を発見しました」

 捜査本部の本部長が質問する。

「ガイシャは男か女か? 持ち去られたのは片手首か、両手首か?」

「女性です……殺されて左手を切断されていました」

「今度は女性か……切断される手首も左右バラバラだな……犯人の目的はいったいなんだ?」


 二ヶ月前からはじまった【連続猟奇手首持ち去り殺人事件】は、市民に不安と恐怖を与えた。

 最初は半年前に、殺されて前足が切断された猫や犬の死体が発見された。

「前足を切断された、カエルが発見されたのが二年ほど前でしたから……犯人はその頃から、予行練習を行っていたのかも知れませんね」


「数年前にニュースになった、クマやサルを殺して手首だけを持ち去る怪異も、こうして考えてみると、人間の手首を持ち去るシュミレーションだったのかも知れないな」

 実は家畜の前脚が切断される事件も、数は少なかったが発生していた。


 捜査は難航したまま、第六、第七の犠牲者が現れた。

 第六の犠牲者は女児で右手を切断されていて、第七の犠牲者は一人暮らしの男性老人で両手を切断されていた。

「第六と第七の犠牲者は、家の中で殺されて手首を持ち去られている……もう、これは人間の仕業とは思えないな」

「宅配業者を装った犯罪の可能性もありますよ」

「監視カメラにも、不審な人物は映っていないんだぞ……それを、どう説明する」


  ◆◆◆◆◆◆


 捜査本部の刑事たちを悩ませる連続手首持ち去り事件は、意外なところから犯行の手口が浮かび上がってきた。

 手首を切断されながらも、生き延びた被害者が現れたのだ。


 夕暮れの下校途中に、スマホの画面を見ながら橋を渡っていた女子高校生の手首が、いきなり切断されたのだった……レーザーのような光線で。

 悲鳴をあげた女子高校生は、橋から川の中に転落した。

 女高校生は一度、川に沈んだが一命を取りとめた。

 そして、転落していく際に女子高校生は、自分の切断された手首が銀色の小さい手につかまれて、空間に吸い込まれて消えるのを目撃していた。


 病室で手首を失った女子高校生の話しを聞いた刑事が呟く。

「やっぱり、これは人間の仕業じゃなかった……未知の怪異だった」


  ◆◆◆◆◆◆


 そして、ついに犯人の明確な姿が海外の、監視カメラに撮影された。

 建物の陰から現れた、身長一メートルほどの、未知の生物が切断した人間の手首を持って、路地を横断して壁の中に消える映像が公開された。


(なにか、得体の知れない生き物が、手首を求めて街を徘徊している)


 世界中は、未知の生物映像にパニックになった。


  ◆◇◆◇◆◇


 人間が見ることも、行くコトもできない空間世界の洞窟──銀色の未知の生物たちが、群れていた。

 宇宙人のようにも、妖精のようにも見える正体不明の生物たちは、互いに集めて持ち寄った新たな手首を、ロウソク立てのようなモノに突き刺して眺める。


 集められた手首に電流のようなモノが流れると、切断された手首は動き出した。

 不気味な光景だった。

 コレクターに理由はいらない、彼らは単に手首を集めて、動く手首を眺めるコトに快感を覚える種族だった。


 銀色の未知の生物が、コレクションに恍惚とした表現で笑った。

「ぐげぇぇぇ……げっげっ」

「ぐげぇぇぇ……げふぁぁ」


 不気味な笑い声は、人間が見るコトも、行くコトもできない空間の洞窟で、いつまでも反響していた。


    ~おわり~

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