赤い手【手】【お題フェス11】

夕日ゆうや

離れゆく手は……

 つながれた手が離れていく――。



▽▼▽



 つーっと涙が頬を伝う。


 あれから私はちっとも成長なんてしていない。


 高一の春。


 私はちょっと遠い高校で一人暮らしを始めた。


 あの忌まわしい記憶を消すためだ。


 両親もそれは分かっている。


 いつまでも脳裏をかすめるあの光景が精神を蝕む。


「これで荷ほどきはおわり、と」


 ふーっと一息吐き、ペットボトルのお茶を飲む。


 ふと手のひらを見る。



 赤い。



 赤い手跡がガラスにへばりつく。


 何度も何度も。


「ひっ!」


 私は慌ててカーテンを閉める。




 男の子が笑う声がこだまする。



「いや、いや――っ!」


 わたしは振り払うようにして外に飛び出す。


 ここに来ても彼は赦してくれない。


 そうだ。


 除霊師にお願いしよう。


 そうすれば過去から逃げられる。




 トラックに轢かれた彼。


 私の手を離した彼。



 轢かれたあと、すぐに手にしたあの血濡れた手。



 私には衝撃的すぎた。


 それが未だに現れる。



 交差点にさしかかると、私は焦燥感からか、真っ直ぐに車道を突っ切る。


『キミだけは生きて』


 何かに阻まれ、私の身体はひょいと持ち上がる。


 トラックが横転し、私の目の前で止まる。


 へたり込む私。


 あの手は、なんだったんだろう。




「PTSDですね」




 医者はそんなことを言う。


 でもなら、あの阻んだ手はなんだったのだろう?




 アパートも変えてみたけど、あれ以来、赤い手は現れない。


 噂によると、最初のアパートが燃えたらしい。


 不思議なこともあるものだ。



 私は今、こうして生きている。


 まるで何かに支えられながら――。

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