本分
やりたくない事、接したくない事、そんなストレスを感じさせる物に対しては、神経も体も如実に反応する。だから可能な限り大人しくさせる事に神経を割かなければならない。
日曜日の夜。寝室に向かおうとする瑠衣の後を追う。ひたひたと相手足音が聞こえる真後ろで、私の足音が聞こえる。瑠衣は自分の部屋に入った後、くるりと此方を向き直った。
「お前、部屋間違えてんぞ」
「添い寝」
「あ?」
最初から冷たい瞳ではあったのだが、『添い寝』という言葉を聞いた途端、殊更冷たい物へと変化した。それこそゴミを見るような視線であった。
瑠衣は添い寝は疎か、触られる事もあまり好まない。だから大抵、私が添い寝をしようとすると、こうして一悶着ある。
なんて説得しようかな。週初めの朝って起きるの辛いから? モチベを上げる為? 精神の安定の為? ああだこうだ、瑠衣が納得する答えを生成しようとしても、何だかやる気が出ず、結局口篭ってしまう。答えを作る気が無いのである。
「なんか、嫌なんだよ」
週初めに一人で起きるの。布団は温いし、二度寝をするにも最適だし、居心地は良いけれど、凄く虚しいんだよ。この幸せな時間が延々と続かないって分かってるから。
そうやって説明すれば良いのに、上手く口が動かない。瑠衣と視線を合わせるのも嫌になって、私はその場で項垂れた。
その姿を見て、瑠衣は何かを察したらしい。ため息を一つ吐くと、ただやる気のない、気怠い口調で、『あんまり依存するなよ』とだけ言った。つまり私の侵入を許したのである。
瑠衣は壁際に自分の身を寄せて、私の分のスペースを開ける。その僅かな隙間に私も体をねじ込むと、そのまま羽毛布団に顔を埋めた。
「週初めの朝ってさ、起きたくないんだよね。自分が一番好きな人に抱き締められて、頭撫でられて、キスされて、自分が一番好きな愛された方をしたい。なんて言うか、『生きてる』って実感が欲しい」
そんな時間が未来永劫続けば良いのにって、思ってる。でも、一人だと何もそれが満たされ無いから何よりも虚しい。
「そこまで面倒見ねぇぞ。明日仕事なんだから」
「知ってるよ」
だからこれで良い。明日になったらまた、しがみつけば良いのだから。
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