1章 3節

(1)

「おはよう、よく眠れた?」

部屋の扉を開き、悪魔の女は挨拶をした。

かつて男であり、面識も全くないはずの彼女に

親しげに、自分の子供にそうするように親しげに挨拶する。

「今日は何月の何日だ?」

声は高く、外見相応の高く小さな声


「あら?男みたいなしゃべり方ね。格好いいわよ」

喜色を顔に浮かべて彼女の頭を撫でる。

彼女はそれを一瞥して頭を撫でる手を押さえて止める。

「さあ、朝ごはんの時間ですよ」

魔物の女は彼女を抱きしめる。柔らかな肌同士が触れ、衣擦れの音が鳴る。

華奢な腕に見えてそれ以上の筋力がある。


やはり、どれだけ人に近くても人以上の力を持っている。

たとえ男だったとしても勝てなかっただろうし

この身体では尚無謀だろう。

「驚かないのか、まだ人間の記憶が残っている事に」

「構わないわ。それより顔を洗いに行きましょう」


この魔物は自分を使って子供を作ると言った。何らか特異な方法で。

今の自分は四十路を過ぎた男から、この魔物と全く同じ特徴を

持った。5歳くらいの背丈の少女になってしまった。

自分の子供として育てたいのなら、

男としての人格は邪魔でしか無いはずだ。


しかし、それを気に留めもしていないということはつまり、

魔物にとって大した問題ではなく、一過性の問題でしかない。

恐らく、今の自分の記憶が段階的に消滅する可能性が高い。

今まで見てきた大勢がそうなってきたように。

更に言えば科学的に考えても、肉体と脳の相互干渉は

証明されている。肉体が変わってしまえば記憶と感情を司る脳へ、

白から黒へと染めるように感覚や意識が書き換えられ、

記憶さえ改ざんされ消失してしまう。


自分は今男の身体から五歳程度の少女の身体へと

置き換えられてしまった。遅かれ早かれ、後天的な影響が出るのは

避けられないだろう。どれほどの時間かは判らないが。


「なあ、あんた。どういうつもりだ?」

「どうって、どうもしないわよ。いつもと変わらないわ」

彼女が男としての人格を持っている事も気に留めず

実の娘にそうするように振舞っているのに、彼女は不気味さを覚えた。


窓の外は雪が降っており、魔物と出遭った頃の季節は春の始まり。

季節が一周しかけているなら、つまりは最低でも1年か

今の彼女自身の年齢を組むと5年以上は経っている計算になる。

貯めた金の預かり所は大丈夫か彼女は心配になるが

心知らずの魔物の女は我が子を食卓へ運ぶ事しか考えていなかった。


(2)

意気揚々、肩を躍らせながら魔物の女は鍋をテーブルに置き

深皿にスープを流し込んでいく。ブイヨンの香りが鼻に届く。

人参、玉葱、芋、肉、黄昏色の中に噛み応えのある大きさに切られ

定番の食材が浮かぶ。

ブイヨンのほかにも、かすかに甘い香りがする。

魔物の女は夜会に着る様な厚手の黒のドレス、

コルセットとロングスカートで袖口もレースアップスリーブと

普段着には不向きな装束だが、汚さないよう器用に

立ち振る舞い、調理場から料理を運び、家事に慣れを見せる。


彼女は腰高の子供用の椅子に座らされ、浮いた脚が揺れる。

スープが受け皿に置かれた。装飾の無い白い皿は湯気が立っていて

作りたてであることを示す。

彼女の感覚的には、三日間森を放浪して久しぶりのまともな食事で

香りを嗅いだ途端に空腹感が胃から這い上がってくる。

ボウルから細かく切ったレタスをトングで摘み

平らに切った白いパンの上に乗せ、手際良く目の前でトマトを切り

レタスの上に乗せ、パンを折りたたんで手渡す。


それらは彼女の好物であったのだが、それ以上に寒気が走る

自身の身内関係から怪我をして行き倒れる原因まで知っている

目の前の魔物が、偶然でこの食事を用意したとは思えない

よく見るとスープにはシュリンプ(海老)が入っており

海が遠く、しかも普通の家は冷蔵庫どころか氷冷庫すら珍しい。

あまつさえ、食事から身辺がばれる可能性を考えて

誰もいない時にしか食事をしたことが無い。

前もって調べられ今日の為に用意していたと考えるのが妥当だ。

「食べないの?」

スプーンを持ったが、一向に動かない彼女に魔物の女は尋ねた。


空腹感が強く戻り、すぐにも口に運びたいと思うが

信用出来ない相手との食事は危険で、薬が混ぜられている恐れがある

スプーンの先でスープを一滴掬い、下を歯茎で押して唾液で湿らせる

こうすることで毒性が希釈され、たとえ口に入れてもすぐに吐き出せる

喉を潤せるほどに唾液を出し、舌に一滴を落とした。

一滴に塩気の強さを感じた。それ以外に苦味も臭さも無かった。

野菜の味もまとまっていて、よく火が通っている。


(3)

「なにやってるのかな?ワインみたいに味を見てるの?」

彼女の行動を理解できず、ソムリエのテイスティングの

真似をしたと勘違いする。頬杖をついて微笑ましくその様子を見る。

だが彼女には挑発の言葉に思えた。

唾液ごと一滴のスープを飲み込んでしまった。


「毒でも混ぜてるのかと思った」

「そんな事するわけないでしょう。冒険本の読みすぎよ?」

からかっているのかそうでないのか判らない言葉が返り

段々と警戒していた事が馬鹿らしく思えてくる。

「それに、毒なんてもう気にすること無いのよ。効かないから」

さも当然のように魔物は語る。曰く、体のつくりが違うために

自然から造られる毒に効果は無いとじっくりと教え込まれる。

子供に教えるように丁寧で優しく、そして男だった彼女には恥辱的に。

性別と種族だけではなく、体質も大きく変質し、

少なくとも今後は毒見に銀の匙は必要ない、ということらしかった。


「少し塩辛い」

「あら、ちゃんと本の通りに作ったのに……」

味覚を鋭くし毒や腐敗を見抜けるよう、自前で調理する際は

調味料を殆ど使うことが無かった。

「今度は美味しくなるように作ってあげるからね」

暢気にそう魔物の女は言った。

海千山千、食わせ者を何度と見たが、一番曲者かもしれない。

かつて男だった少女は、そう思った。


(4)

流し台で食事を片付ける魔物の背に、彼女は問いかけた。

「何故俺を選んだ。ならず者なら誰でも良かったはずだろう」

今日までの情報を拾い上げてまとめると、魔物の女は彼が狩人として

活動していた頃から既に狙いを定め始めていた。

今までの情報全てが、何年と観察し見抜いていないと把握出来ない。


失敗し仲間を全員失い、その果てに迷い込んだのが

狙いをつけていた魔物というのは話が出来すぎている。

何より恐ろしいのは彼自身が細心の注意を払いながら、

素顔を隠し偽名を使い偽の戸籍すら用意した。

そして同じ街に滞在することは無いようにしていた。

だからこそ狩られた者たちへ復讐の機会を与えなかった。


皿を洗い終わり、布巾で手を拭くと手馴れた手つきで

流しの横の水切り台に布巾で拭いた皿を立て始める。

「色々あるけど、一番の理由は一番強いからよ

私のやり方だと、身体が強い方が望まれるから」

「冗談だろ、あんたが知っての通り、心臓病があった

自分にすらいつどうなるか判らなかったくらいだ」

「病気なんて問題じゃないわ。それにね、

正体を隠し続けるなんて無理な話よ。だってあなた、

魔物になった人を沢山助けたでしょう」

皿を立て終わり、彼女の方へ向くと食卓のテーブルに再び座る。


この世界に来て五年間、顔と素性を隠してきたとしても

彼にはたったひとつだけ隠しきれない事があった。


魔物へと果ててしまい、人を襲うようになる者は多い

だがそれ以上に多いのは、人と魔物の境界線の上で

必死に人間である事を保とうとする者たちだ。

彼が狩人として見てきた中ではほとんどの者がそうであった。

死を望んだならばそれを叶えることもあったが。

人間としての尊厳を保つための行いであり、それは狩りではない

そして自ら死を望む者は少ない。命乞いもすれば


絶望し自失する者、自棄を起こす者などそれぞれの共通因子は

望んでいないのに人としての生活を諦めざるを得ない事だ。


人で無いと認めれば銃の引き金が軽くなる彼をもってしても、

人として足掻く姿無視する事は出来ず、手を差し伸べた。

彼らの言葉を拾っていけば、名も知れぬ者の正体に迫ることは容易い。

治療や職の斡旋、或いは狩りへの帯同と、もっとも正体不明の狩人と

密接になる機会の当事者なのだから。


(5)

正体を突き止められた原因は、単に自分のお節介が原因か。

甘すぎた。そうしなければ自分がこうなることも無かったのに。

「そんな顔しないで、責めてるわけじゃないの。

お金を貰って魔物を狩るだけの人だったら興味持たなかったわ」

何れにせよ、行いの廻り巡りがこの結果を招いた。


「それで、俺をどうするつもりだ。殺してきた魔物の復讐するのか」

依頼、個人的感情を合わせて、狩人として殺めてきた魔物の数は

三桁に届くだろう。善悪はどうあれ、文化を持つ集団に弓を引く事は

その怨恨を背負う覚悟が無ければ出来ない。それが出来る狩人は少ない。


「まさか、そんなことするわけないでしょ」

深読みしていると言いたげに手を口に当てて笑う。

座る彼女の後ろへ回り込み、後ろ髪を軽くかき上げ、耳に囁く。

「あなたに興味があった。だから子供にしたかった。それだけ」

その満足げに語る甘い声と、満足気に背中から抱きつく女の仕草

かつて男だった彼女はスティーブン・キングのミザリーを連想した。

「俺が目が覚めるまでどれだけ時間が経った?」

「10ヶ月と半月よ。あなたがここに来たときが2月の終わり」

「俺をこの姿にどうやって変えた…?」


彼女の経験則では、切り傷、刺し傷、他には何らかの呪術によって

人間が別の存在に変えられる。大半のものがそれだ。だが恐らく

この女のやり方は自然、一般的なそれよりも遥かに逸脱したものだ。

背中から横に立つと、女は彼女の左手をそっと取る

「ここよ、ここに10ヶ月いて、半月まで赤ちゃんだったの」

下腹部、それはまさに、子宮の位置に彼女の手が当てられていた。

「何人もの変人と出遭ってきたが、あんたは別格だよ……」


(6)

恐怖心は理解が及ばないほど加速的な増幅を見せる。

彼も例に漏れず、外側から注がれたそれを心の内側に蓄えてしまう

単純な悪意や憎悪からの行動ではなく、好意や興味からの軟禁ほど

より逃亡は難解になる。


自室として与えられたのは目覚めた部屋であり、彼が男であることを

最後に過ごした場所でもあった。その部屋から窓の外を見ると

昼だというのに空は灰色で音を消すほどの大量の雪が降り、

森の木は白化粧で朽木も隠れ一年草は葉の雪を、

窓枠にうっすらと積もっている。


仮に逃げ出そうにも5歳児の不慣れな体で外を出歩くのは自殺行為、

肌着しか身に纏わないなら1時間と持たないのが道理。

狩人として使ってきた道具も子供の姿では扱えない。

それ以前に10ヶ月も経っているのなら既に捨てられているだろう。


自分が深手を負うのも偶然では無かっただろう。彼はそう推理する。

感覚的には昨日までの出来事であり、実際は10ヶ月と半月以上前、

そこからからさらに前になる。

傭兵を雇い森の最奥にある屋敷の調査へと向かった。

普段は雇わないが事前調査から嫌な予感がしていた。


森は深みに達する程暗く重い空気が漂い、鳥の囀りも

小動物の鳴き声も木霊しない沈黙の森、葉を食う虫すら敬遠したのか

より一層と森は暗くなり、その屋敷は黒ずんだ大岩のように見えた。

建物は古い割に手入れが行き届いていて、扉も比較的新しい。

気になるのが扉の前の泥に残る足跡、それぞれの跡は

ブーツ以外にも様々な靴跡があるなそのどれもが正面扉に

向かっているが、扉から森へ出て行く足跡がひとつも無い。

周りを調べていると、見計らったかのように大雨が振り出した。

それは狙ったかのような雨で、葉の隙間を通って合わさった大粒が

狙うようにして自分へと直撃した。まるでジャングルのスコールだった。

それを避けるように玄関扉に入りかけたが、雨具を持っている事を思い出し


濡れながらも一式纏ってそのまま拠点の村へと帰った。

5分もしないうちに雨は止み、村の空は蒼一色で濁りは無かった。

その差に不吉を感じ、宿で傭兵をしているものに片っ端から当たった。

結論から言って無駄では無かったが、彼らの命を無駄にする結果になった。

その日も狙ったように土砂降りになり更に雷まで落ちた。

不吉さを胸に正面扉を開け続けるよう傭兵の一人に伝えて、

そこから先はもう思い出したくも無い。

いつか手に負えない化け物が現れる妄執は現実になった。

相手の気分で人の命などどうとでもなる。


(7)

居間で箒掃除をしている魔物の女に、彼女は問うた。

「俺の持ってた荷物はどうした?」

「あら、忘れてたわ。ちゃんと倉庫にしまってあるわ、待ってて」

箒を壁に立てかけ、壁の鍵を取るといそいそと外に出ようとする

捨てられていない事に安堵し、少しだけ沈んだ気分が戻る。

魔物が荷物を持ってくるまでの間、ミザリーの映像が頭に浮かぶ


「たくさんあるから、もう少し待っててね」

敷かれた厚紙に、背嚢に水筒、銃と薬品、裁縫道具と堆くなる。

「部屋まで持っていく?それともここで何かやる?」

「マッチ擦って燃やせ、とか命令しないのか?」

彼女の怯えを孕む問いに、呆れ笑いをした後に頭をゆっくり撫でる。

「そんな酷いことするわけないでしょう?どうしちゃったの?」

「いや、昔そういうことがあって」

「酷い事する人がいるものね。そんな事しないわ」

どの口がそれを言うのか、彼女は思う。

とりあえず何も捨てられていないのは本当らしい。

常軌を逸しているが生活上では多少の常識があるらしかった。


一通りの荷物を往復して運び終わり、一息ついた。

今日一日で人生の禍々しい恐怖の何割を味わった気がする。

正しく言うなら生まれ変わってからの二割、だろうが。

よく着ていた灰と緑の斑模様の服を羽織る。

撥水繊維と難燃加工が施された厚手のもので修繕しながら

彼女は5年は着続けた。淵が床に擦り、二の腕のあたりで

腕がつっかえる。成人男性の体格から5歳の子供に成り果てたのだから

当然だが、生物としての弱体化を示唆されているようで辟易する。


(8)

「こんな時風呂に入って気分を変えてたな…」

仕事の成果に関わらず終えた後には必ず入るようしていた。

そうするとその日にまとったものが落ちる気がしていたからだ。

彼は忘れきっていて、既に少女としての自分に染まり始めている気がした。

一にも二にもまず冷静になるほかない。この家の風呂の時間はいつだろうか、

「いつでも入っていいのよ。いつでも入れるようにしてあるから」

有難いはずだがやはり、何か裏がある気がしてならない。

宿では時間割を把握しておく必要があった。


風呂のガラス戸を引くと、まるで沸かしたてのように湯気が押し寄せる。

彼女の部屋の横にあった風呂は、楕円のタライに湯を張ったものではなく

陶器に真鍮の四足で格調高く、床も土間ではなく四角いモルタルの

張り合わせで安宿とは比べ物にならない。頭髪用の洗剤瓶も大小二つある

彼女が泊まってきた宿でもっとも酷いものは裏口にタライと足し湯用の

薬缶とボイラーが備えてあるだけだ。真冬には絶対に使いたく無かった。

ボイラーと薬缶はどの宿の風呂にも必ずあったはずだが

この家にはそれらが無い。よく考えると暖炉もそれ以外の暖房も無い。

外は大雪なのに肌着一枚でも寒くないのだ。

あるとすれば魔女のように呪術で環境を変えているのだろうが

しかし魔女の家ですら暖房はあった。更に言えば湯を沸かすのに

呪術の類は使わない。


生物的能力は世間のそれより遥かに格上。

だから呪術で部屋も湯も暖める事ぐらいは簡単に出来る。

嫌な気づきに纏った汗が更に脂を溜める気がした。


(9)

ショール、シュミーズ、パンタレットの順に寝台に脱ぎ捨て

浴室に入った。湯船に入る前に、彼女は初めて一糸纏わぬ姿を見た。

最初に少女になっていた現実を知った時のように何の感情も湧かない事に

安心する。まだ内面の変化は訪れていないのだと。

風呂椅子に乗り、枠を跨いで足先を湯に挿す。入るのに適した温度で

片足ずつ沈め、仰向けに沈むように枠へもたれかかった。

なまじ背の高かった彼が彼女となった今、脚を大きく伸ばせる風呂は

5年ぶりの享楽になり、低くうめく声が喉から漏れる。


最悪な状況には代わりないが、一人くつろげる時間があると知り

気張りが抜けた。湯気のまどろみに浸りながら腰や腕を摩り始める。

彼女が長い間煩っていた背骨の痛みも耐えがたい縫合の疼痛もなく

その代わりに痛みを感じていた記憶がぶり返す。

痛みを感じない保証を得ると、更に力を抜き湯船に髪を深く漬け

顔だけを出して天井をじっと見た。彼女が昔からそうしたように。

この瞬間だけが狩人という重石から解き放たれるひと時の忘却。


真横のガラス戸の向こう側から音がして、現実に引き戻される。

足音から衣擦れの音が大きくなり、風呂に顔目元まで沈めて伺う。

頼むから来ないでくれ、漏れた言葉が湯船の泡になる。

無遠慮に戸が開き、タオルを持って魔物が現れる


「女の子の髪の洗い方、教えてあげるわね」

「何で裸なんだ?」

「一緒に入ったほうが早く済むでしょ」


湯船に浸かったままの彼女をそっと前に退かし、続いて魔物の女も

風呂に入ってくる。腰まで入り込んだところで湯船から湯が

大量に溢れて浴室は白く染まりきった。

背中から抱え込まれるように窮屈に押し込められ、肌と肌、

肉と肉が押し合い狭苦しくなった。

「髪の毛はね、まず湯船に入れて柔らかくしてからじゃないと

枝毛になっちゃうの。5分はお風呂に入ってから洗ってね。あと――」

後ろ髪を撫でながら説明されるが、狭苦しさと安息を妨害された

苛立ちで頭の中に入ってこない。諦観のまなざしで白の空を

じっと見ていた。


「ところで、聞いてなかったけどあなたの名前ってなんて言うの」

あれだけ精密に自分について調べていたと思ったが、

やはり名前は判らなかったようだ。5年間偽名しか使っていなかったから。

「名前はポール・シェルダン」「偽名で無い方よ。ね?いいでしょ?」

初めて名乗った偽名であるのに、見抜かれて彼女は少し悔しくなった。

「…ヘムロック…。ヘムロック・カーネッジ」

「へぇ、いい名前ね。でも女の子の名じゃないわね。リリーなんてどう?」


「勝手にしてくれ。あんたの名前は?」

「私の名前はサレナ。これから末永くよろしくね」

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