第2話 ずさんな脅迫

「ありがとう……松原くん、だよね? 迷惑かけてごめん」


 スポーツドリンクを飲みつつ、花洛さんは謝ってくる。


「いや、大丈夫だよ、これくらい。叔母さんもゆっくりしていきなって言ってるし」


 花洛さん、間近で見るとますます美人に見える。家計面、健康管理面が破綻しているというのに、これだけの美貌を保つのは骨が折れるだろう。


「あの、これを差し上げますので、どうか、どうか学校ではこのこと内密にお願いします……」


 花洛さんは、フードデリバリーのバイトのことをよほど知られたくないのか、口止め料を支払ってきた。


「いや、そんなことしなくても俺は喋らないって……ん?」


 手渡されたお金を見ると、1000円札が一枚と、100円玉が2枚。


 1200円だった。


「これは……どういうことかな?」


「ですから、これでどうにか口外しないようお願いします……」


「いや安すぎるでしょ。口止め料にならないよ。いくら高校生相手とはいえ」


「なっ! じゃあ口外したら、我が花洛家の総力を挙げて、松原くんを社会的に抹殺するから! よろしくて?」


 なんで急にお嬢様口調なんだよ。


 口止めの次は脅迫をしてくるとは。


 だがそんなことより、我慢ならないことがある。


「……ずさん過ぎる」


「え?」


「ずさん過ぎる! どういう計算でこの口止め料になった! それと、脅迫するならそれなりに根拠のあるハッタリを効かせろ! 何も考えてないのか?」


「え、そっち?」


 花洛さんはポカンとしている。


「花洛さんが限界ギリギリの生活をしてるのは見れば分かる。口止めや脅迫をしてまでプライドを守りたいのも分かった。だったら! そこまでのこだわりがあるなら、ちゃんと脅迫しようよ!」


「えぇ……」


 花洛さんはなぜか困惑し始めている。


「まず、秘密を守るというリスクに見合った口止め料じゃなきゃ、意味がないよね?」


「それは、そう……」


「やり直しだ」


「え?」


「俺が指導するから、ちゃんと脅迫してみて。できるまで帰さないから」


 これではコンサルというより、犯罪プランナーだな。


 と思いつつも、俺は暴走を止められず、徹底指導を始めてしまった。

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限界没落令嬢の参謀役になった俺、学園のS級美少女たちをマネジメントすることになる 川崎俊介 @viceminister

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