第51話 意地
二人の蒼の気が真正面からぶつかり合い、衝撃波が何重にも広がる。
雲が引き裂かれ、気圧が狂い、地上の瓦礫が宙に舞った。
翔馬は歯を食いしばり、MODE何点の出力をさらに引き上げる。
(押し負ける……!)
腕が震える。
蒼鎧に走る細かなヒビ。
一方で蒼気は、余裕すら感じさせる表情で翔馬を見下ろしていた。
「それが全力か?」
蒼気の蒼の気が質量を持ったかのように重くなる。
次の瞬間。
蒼気が一歩踏み込んだ。
たった一歩。
それだけで距離が消失する。
「――っ!」
翔馬は反射的に身を捻るが、遅い。
蒼気の掌底が腹部に突き刺さる。
衝撃が内部で炸裂し、内臓が揺さぶられる。
「がっ……!」
翔馬は血を吐きながら空中を転がる。
だが、そこで終わらない。
蒼気は追撃を止めない。
空中を蹴り、翔馬の上を取り――
「教えてやる」
蒼の気を纏った踵が、叩き落とされる。
「神の戦い方を」
直撃。
翔馬の身体が流星のように地上へ落下する。
轟音。
地面に巨大なクレーターが穿たれ、粉塵が立ち昇る。
「……」
蒼気は上空から静かに見下ろす。
「立てるか?」
沈黙。
――だが。
クレーターの底で、蒼の気が再び灯る。
瓦礫を押しのけ、翔馬がゆっくりと立ち上がった。
膝は震え、呼吸は荒い。
それでも――目は、死んでいない。
「クソ……速い……!」
翔馬は拳を握る。
次の瞬間。
翔馬の蒼の気の流れが変わった。
無理に出力を上げるのをやめ、
蒼の気を身体の動きと完全に同期させる。
蒼気が、わずかに目を細めた。
「……ほう?」
翔馬は地を蹴る。
今度は――消えない。
だが、無駄がない。
最短、最速、最小の動き。
拳が蒼気の顔面を狙う。
蒼気は軽く首を傾け、躱す――
はずだった。
拳が、かすめた。
「……!」
蒼気の頬に、浅いが確かな裂傷が走る。
蒼の気が弾け、血が一筋流れた。
蒼気は指で血を拭い、静かに笑った。
「なるほど……」
蒼の気が、さらに深く、鋭く研ぎ澄まされる。
「お前のMODE……未完成か。
あと一つのピース……」
蒼気は両手を広げる。
「“解”だ」
次の瞬間。
蒼気の姿が複数に分裂した。
残像――否、
すべてが実体を持つ攻撃体。
「……っ!これは……!?」
四方八方から放たれる蒼の気の斬撃。
翔馬は蒼鎧を展開し、必死に捌く。
防ぐ。
避ける。
受け流す。
だが、一撃が――
肩を裂いた。
「ぐあっ……!」
血が宙に散る。
蒼気の声が、重なるように響く。
「耐えろよ、翔馬」
「それが出来なければ――」
すべての蒼気が、一点に収束する。
「お前は、ここで終わりだ」
翔馬に向けた殺意が、完全に解き放たれた。
翔馬は荒い息の中で拳を握り締める。
(……負けるわけには……)
仲間の顔が脳裏をよぎる。
無い野。
与志野。
田野。
当て野。
そして――守ると誓った、日常。
翔馬の蒼の気が、静かに、しかし確実に変質していく。
「……来いよ……蒼気……」
目を見開く。
その時。
蒼の気がぶつかり合う空間に、
異質な静けさが割り込んだ。
「……そこまでだ」
低く、落ち着いた声。
翔馬と蒼気の間に――
一人の男が立っていた。
「無闘……!」
翔馬が息を荒げながら名を呼ぶ。
無闘は一度も振り返らない。
ただ、蒼気だけを真っ直ぐに見据えていた。
「ほう……」
蒼気はわずかに口角を上げる。
「無闘……多い死を倒した男か。」
無闘は拳を握る。
「こっからは……俺がやる。」
その瞬間。
無闘の身体から、蒼の気が静かに反転した。
派手な光はない。
爆発的な放出もない。
だが――
血管の一本一本に蒼の気が行き渡る感覚が、空気を震わせる。
「……来たか」
蒼気が目を細める。
「MODE反転」
無闘の蒼の気は、外に溢れない。
すべてが体内で循環し、最適化されている。
無闘は一歩、前に出る。
「これ以上壊させねえぞ、蒼気。」
次の瞬間。
無闘が消えた。
――いや、速すぎて認識できない。
蒼気が即座に防御の蒼の気を展開する。
だが。
無闘の拳は、防御の“薄い点”だけを正確に打ち抜いた。
――ゴッ!!
衝撃が蒼気の内部にまで響く。
「……っ」
蒼気が一歩、下がる。
その事実に、翔馬が目を見開いた。
(蒼気に……当てた!)
「理屈か」
蒼気は口元を歪める。
「確かに完成度は高い。
だが――」
蒼の気が爆発的に膨れ上がる。
「それだけだ」
蒼気の拳が、真正面から振り抜かれる。
圧倒的質量。
圧倒的出力。
普通なら、消し飛ぶ。
だが無闘は――
受け流した。
拳がぶつかる瞬間、
蒼の気の流れを“反転循環”させ、
衝撃を体内で分解・分散する。
「………!」
蒼気の攻撃が、殺しきれない。
無闘は一歩も引かない。
「そんなもんかよ!」
肘。
膝。
掌底。
最短距離の連撃が蒼気を襲う。
一発一発が軽い。
だが、確実に削る。
「チッ……」
蒼気が後退しながら距離を取る。
「面白い……」
蒼気の蒼の気が、質を変える。
より荒く、より危険に。
「だがな、無闘」
蒼気は告げる。
「所詮お前は人間……!どれだけ血の滲む努力をしようと……!」
蒼気が踏み込む。
「神には敵わん!」
激突。
無闘は真正面から迎え撃つ。
MODE反転がフル回転し、
血液と蒼の気が限界速度で循環する。
(……来る……!)
無闘は理解していた。
蒼気は、まだ本気じゃない。
それでも。
「……それでいい」
無闘は歯を食いしばる。
「俺は――
時間を稼ぐ」
視線の先で、翔馬の蒼の気が再び高まり始めている。
「あいつらが辿り着くまでな!」
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