第23話 抹殺斗の本気
廃工場に響く、鉄を殴りつけるような衝撃音。
翔馬の拳。
抹殺斗の蒼の装甲。
二つの蒼光がぶつかるたび、
床は砕け、壁は振動し、機械は倒れた。
抹殺斗は無表情のまま歩み寄る。
「……もういいだろ、亜里野。」
「ハァ…ハァ…クソ…!」
抹殺斗が拳を突き出す——
それはただの正拳突き。
だが蒼の全身鎧が乗るそれは、
質量と破壊力が桁違いだった。
翔馬は紙一重で避けるが、
拳が掠めただけで空気が裂け
肩に深い痛みが走る。
(……防げない……!
鎧が全身に行き渡ってる今の抹殺斗は……
一切の隙が無い!!)
抹殺斗はさらに歩く。
その足音すら重い。
「《double step》——身体能力強化、常時発動。
《quattro step》——更なる身体強化、短時間だけ。
もう手札がこれしかないなら……今のお前の動きはもう完全に“読める”。」
翔馬は息を切らし、もう一度踏み込む。
「……まだだ!」
《double step》の軌跡を重ね、
目に見えない軌道で突進する。
しかし抹殺斗は肩を少し傾けただけで
翔馬の拳をかわした。
「軌道が単純だ。」
抹殺斗が指を鳴らす。
次の瞬間、目の前にいた。
「——ッ!!」
翔馬は避けきれず、腹に拳を食らった。
ドガァッ!!!
翔馬の身体が床を滑っていき、
鉄骨に叩きつけられる。
「ぐっ……!!」
視界が揺れる。
肺が潰れ、呼吸が乱れる。
(……くそ…!!勝てねえ……!!)
抹殺斗は歩みを止めない。
その一歩ごとに、破滅が迫る。
翔馬は拳を握る。
その拳が震えても——離さない。
(何とか……!もう一度quattro stepを発動しないと…!)
翔馬は一歩踏み出し、
右足に蒼を集中——
次に左足に蒼を集中——
だが、そこからもう一段階。
「quattro …step!!」
翔馬が踏み込む瞬間、
廃工場全体が“蒼の衝撃波”で揺れる。
二つの力が、わずか数メートルの距離で対峙する。
抹殺斗は静かに言う。
「……それは自殺行為だろ、亜里野。
見た所そのquattro step…もう発動できる身体じゃないだろ。」
翔馬は汗を拭いもせず、笑った。
「……どうかな……。」
抹殺斗は肩を僅かに下げ、重心を落とす。
「来い、お前が抱いている僅かな希望も壊してやるよ。」
空間が歪む“瞬間”。
翔馬は焼きつくような痛みを無視し——
「quattro……!!!step!!!」
負荷が脚に刺さり、骨が悲鳴を上げる。
(……もっと速く……!!もっと!!)
翔馬の蒼光が閃く。
バシュゥッ!!!!
抹殺斗の拳が翔馬の右肩ぎりぎりをかすめ、
服が破ける。
だが翔馬は止まらない。
蒼を体中に巡らせ、
一歩ごとに“世界から滑り抜ける”ように踏む。
抹殺斗の目に、初めて焦りが映る。
(こいつ…とっくに限界を超えているのか……!痛み…負傷からか軌道が乱れている……逆に読めない!!)
翔馬は走りながら叫ぶ。
「——痛っ………ここで…!絶対に終わらせる!」
抹殺斗も即座に反応する。
「見えてるぞ!!亜里野翔……!!」
蒼い光が工場の中央を横断する。
梁が、壁が、鉄骨が、
触れた瞬間“世界から消え”ていく。
「なっ……!!!」
翔馬は抹殺斗の予測を——
速度でねじ伏せた。
(馬鹿な……!!見えん!!あいつの姿が!!)
(ここだ……!
ここで踏まなきゃ意味がない!!)
肺が焼け、視界が白くなる。
足はもう千切れそうだ。
(でも……止まれねえ!!)
翔馬の蒼が最高潮に達した。
蒼光の線が破裂するように伸び、
抹殺斗に迫る。
抹殺斗は再度構えるが——
(まずい……このスピードは……!?)
翔馬の拳が迫る。
抹殺斗は反射的に、
蒼の気を胸に一点集中させた。
蒼の盾。
「……ッ!!」
「蒼の気の………コントロール……!!!」
拳に蒼の残光が凝縮する。
「喰らええええええッ!!!」
拳が抹殺斗の胸に直撃。
————ドッッッッッ!!!
廃工場の鉄骨が震え、
床が大きく沈み込んだ。
「ゴッッ………!!!ハッ……!!」
抹殺斗は数メートル吹き飛ばされ、
鉄骨を何度も弾かれながら壁に激突した。
背後の壁が“ひび割れる”。
翔馬は倒れ込み、
足を押さえて荒い呼吸を繰り返す。
(足……動かねえ……!
“あの一瞬”に全て踏んじまった……)
抹殺斗は砂埃の中から立ち上がる。
胸には拳の跡が残り、
蒼の防御が完全には追いついていなかった。
血が一筋、静かに落ちる。
抹殺斗が、
初めて、明確に怒りと焦りを帯びた瞳で翔馬を睨んだ。
「……土壇場で……蒼の気の……コントロールを…コツを掴んだ…ようだな…。」
翔馬は床に手をつきながら立ち上がる。
「まあな……、でも……せっかくコツを掴んだのに…蒼の気…使いきっちまった…。」
抹殺斗は胸に手を置きながら呟く。
「ゴホッ…そうだな…お前から…もう…蒼の気を感じない…」
翔馬は悔しげに拳を握る。
(……ここまでか……!)
抹殺斗の体が蒼く発光する。
「…思ったより…手こずったな…」
蒼光が翔馬を包むように広がっていく。
翔馬は足が震えるのを必死に抑え、
残った蒼の気を練り上げようとする。
だが身体に激痛が走り翔馬は崩れ落ちた。
「グッ……うぅ……」
(ダメ…だ…もう…一欠片も…絞り出せねえ…)
抹殺斗の手が翔馬に伸びたその瞬間——
廃工場の奥から、爆音が響いた。
翔馬と抹殺斗、同時に振り向く。
(……与志野…田野…!?)
フンペチ戦の終幕を告げる衝撃音。
抹殺斗が拳を構える。
「あっちは…終わったようだな。」
抹殺斗の手が蒼の気を帯びる。
(与志野……ごめん……蒼気……先……生…………)
「抹殺。」
———バシュッ!!
抹殺斗の手刀が翔馬を袈裟斬りに切り裂いた。
翔馬の身体から大量の血が吹き出す。
翔馬は吐血しながら静かに倒れた。
「………」
抹殺斗が翔馬に背を向け歩き出した。
「さて…早くフンペチに死体処理をさせないとな…」
抹殺斗がフンペチ達の後を追おうとしたその時。
「………?」
抹殺斗はある違和感に気づいた。
翔馬の身体から微量だが蒼の気の気配がする。
だがそれは、これまでの蒼光とは違う。
色が深く、質量を持った“圧力”になっていた。
抹殺斗の目が細くなる。
「……何だ…?」
決着が着いたはずの戦いが…
再び始まろうとしていた。
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