二人は友達

テマキズシ

二人は友達


「ねえねえマキちゃん」


「どうしたんですか? 愛さん」


 二人の女性がゲームをしていると、その片方が何気ない表情でポツリと呟いた。


「最近私の家に霊が出るんだよね」


「そうなんですね」


 普通の人なら何かしら反応するはず。

 しかしマキと呼ばれた少女は興味が無いのか適当に言葉を返した。


「軽!? そんな雑に流すなんて酷くない!?」


「だって貴方。前にも変なこと言ってたじゃないですか。勝手にインターホンを鳴らす妖精と勝手にイヤホンをぐちゃぐちゃにする妖精が出るって」


「うん! 今日の朝もおじさんたちに会ってきたよ!」


「…………ハァ」


 マキは深くため息をつく。

 心底呆れたような表情で、彼女は愛と呼ばれた少女の顔をじっと見る。


「そんな変なことばかり言ってるから、私以外友達がいないんですよ」


「むう! 私は本当の事しか話していないよ!」


 愛はプクりと頬を膨らませ、マキに対して抗議する。


「はいはい。本当だったら前者は警察を呼ばないと駄目でしょう…。後者は…ネズミでもいていたずらしてるんじゃないですか?」


「ネズミ…! 怖いよマキちゃん!」


「そっちなんですか…貴方は…」


 普通は前者を怖がるべきなのにと、マキは頭を抱えてしまう。


「……う〜ん」


 プルプルと小動物のように震えている愛にどう声かけしようかと考えだす。



 ピンポーン


 その時、突然インターホンが鳴った。


「ん? 配達かな? ごめんマキちゃん。ちょっと出るね!」


「はい。先にステージ進めちゃいましょうか?」


「それだけは止めてね!」


 愛はドタバタと部屋を出る。

 残されたマキは静かになった部屋の様子を見て、ため息をついた。


「…はあ。相変わらず彼女と話すと疲れますね」


 友人に言うこととしてはかなり酷い言葉だ。

 マキは内心でそう思った。



「……あれ?」


 そして一つ、疑問が生まれる。


 なぜ、私は愛さんの家に遊びに来ているのだろうか。


 彼女は確かにクラスメイト。

 しかし、それだけだ。


 別に友達というわけではないし、親しく話をしたこともない。



 ……なのに、なんで?




ガチャガチャ!!


「ヒッ…!?」


 その時、突然近くのタンスが揺れ、タンスの一つが開いた。


「……な、なんですか?」


 見なければならない。

 なぜだか分からないが、マキはそう思った。


 恐る恐る、震える手で、開いた箇所を覗き見る。


 そこには、イヤホンがあった。


 ぐちゃぐちゃに絡まったイヤホンは、【逃げろ】と文字を作りだしている。


「……なに、これ?」


 心がぞわりと震え出す。

 数歩下がり、逃げなければという強迫観念がマキの心に生まれた。


「……逃げなきゃ」


 震える体を奮い立たせ、この場から出ようとしたその時……。


「マキちゃ〜ん! お待たせ!」


「キャッ!?」


 後ろから暖かい手のひらが、私の両面押さえてくる。


 そして耳元で、こう呟いた。


「……マキちゃん。早くゲームの続きをしよう? だって私達、友達じゃない。…ね?」


「……………そ、そうですね。私達は、友達ですからね」



 ……私は何をしていたのだろう。


 早く友達の愛と一緒にゲームをクリアしなければ。

 私はゲームコントローラーの元へ戻る。



「……朝釘を刺したのに。酷いなぁ」


 後ろからマキが何かよく分からない声と共に、タンスを閉める音が聞こえてきた。













「ねえ愛さん」


「ん? どうしたのマキちゃん!」


「なんか、どっかから腐った肉の臭い…しませんか?」


「…気のせいだよマキちゃん。気のせいだから。絶対に」

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二人は友達 テマキズシ @temakizushi

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