その初恋は何を殺すのか
田中
プロローグ 貴方は知らない私から
「フィリシアレ……貴女は自由です。好きなように……。幸せな人生を生きてください。」
公爵邸のベッドに横たわり、今にも消えそうな息を切らしながら、ルッツェリヒは続けた。
「貴女にとっては居心地の悪い場所だったかもしれませんが、私は……。貴女と婚約し、共に過ごせたことを幸せに思っています……」
彼の手を握りながら、私は
1年……たった1年しか共に過ごしていない婚約者、ルッツェリヒ。
小国の第3王女として生まれた私は、同盟のために大国ディゾーネの王子ルッツェリヒと婚約をした。ディゾーネ王国に移り住んだ婚約期間中、望まぬ婚約に落ち込み、何事にも無関心に過ごしていた。そんな私にルッツェリヒは根気強く向き合い、尊重し続けてくれた。人生の中で、こんなにも私を見ていてくれた人はおらず、彼を好きにならないわけがなかった。いつのまにか、彼の笑顔に、私の手をそっと取ってくれる大きな手に安心していたのだ。
意地を張っていた私も、少しずつ素直になり始めた矢先、ルッツェリヒは襲撃を受けて怪我を負った。大した怪我ではなかったはずだった。にも関わらず、みるみるルッツェリヒの状態は悪くなり……。
私に『幸せな人生を生きてください』と言い遺してから2日後、ルッツェリヒは息を引き取った。
王子の死は国の一大事となり、王族をはじめ、様々な貴族やルッツェリヒを慕う領民など、多くの人が葬式に参列していた。
「ルッツェリヒ様もお可哀想に。あんな愚鈍な姫と婚約しなければ、王位はルッツェリヒ様のものだったというのに。」
「あんな引きこもりの姫、王妃の器じゃないからって、婚約破棄の話も出ていたのに、ルッツェリヒ様は断ったらしいわよ。」
「お優しい方だから、他国の姫である婚約者に気を遣ったのよ。」
「こんなにお若くして亡くなったのも、心労が祟ったせいだ。」
口々に聞こえてくるのは、ルッツェリヒが私のせいであまりに多くのものを失っていたという事実。彼が払った犠牲を、ルッツェリヒの葬式でやっと知るなんて。
私は本当に愚鈍ね。彼のおかげで私の人生は豊かになったというのに、私は彼の人生を台無しにした……。世界は、なぜ私を代わりに殺してくれなかったのだろう。
こんな世界は、認められない。こんな私は、許されてはいけない。
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