マドロミ
ライカ_Lyka
微睡
目は覚めていた。
けれど、起き上がる理由が見つからなかった。
天井の白い染みを数えながら、呼吸の音だけを聞いていた。朝の光はカーテンの隙間から差し込んでいる。眩しくはない。ただ、そこにあるだけだ。スマホが震えた気がして手を伸ばしたが、通知はどうでもいいものばかりで、すぐに画面を伏せた。
眠いわけじゃない。体が重いわけでもない。
なのに、起きるまでに、いつも少し時間がかかる。
階下から食器の触れ合う音が聞こえる。母の声と、ニュースの音。日常はきちんと動いている。自分だけが、その流れに乗る前で立ち止まっているみたいだった。
制服に袖を通す。鏡に映った顔は、特別ひどくも、特別良くもない。何かを期待される顔でも、拒絶される顔でもない。そういう顔だと思った。
今日は何があるんだっけ、と考えようとして、やめた。考えなくても一日は進む。学校に行って、授業を受けて、友達と少し話して、帰る。それだけのことだ。分かっている。分かっているはずなのに、胸の奥に小さな空白があって、それが埋まらない。
不満があるわけじゃない。
ただ、満足もしていなかった。
階段を下りながら、ふと、こんなことを思った。
もし、この感じが消えたら、どれだけ楽だろう、と。
それは願いというほど強いものじゃなかった。ただの思いつきだ。すぐに忘れてもよかった。でも、その考えは、朝の光みたいに、静かに残り続けた。
玄関を出る。空は晴れている。
今日も、朝は来た。
それだけが、確かなことだった。
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マドロミ ライカ_Lyka @abyss_fixer
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