マドロミ

ライカ_Lyka

微睡

 目は覚めていた。

 けれど、起き上がる理由が見つからなかった。


 天井の白い染みを数えながら、呼吸の音だけを聞いていた。朝の光はカーテンの隙間から差し込んでいる。眩しくはない。ただ、そこにあるだけだ。スマホが震えた気がして手を伸ばしたが、通知はどうでもいいものばかりで、すぐに画面を伏せた。


 眠いわけじゃない。体が重いわけでもない。

 なのに、起きるまでに、いつも少し時間がかかる。


 階下から食器の触れ合う音が聞こえる。母の声と、ニュースの音。日常はきちんと動いている。自分だけが、その流れに乗る前で立ち止まっているみたいだった。


 制服に袖を通す。鏡に映った顔は、特別ひどくも、特別良くもない。何かを期待される顔でも、拒絶される顔でもない。そういう顔だと思った。


 今日は何があるんだっけ、と考えようとして、やめた。考えなくても一日は進む。学校に行って、授業を受けて、友達と少し話して、帰る。それだけのことだ。分かっている。分かっているはずなのに、胸の奥に小さな空白があって、それが埋まらない。


 不満があるわけじゃない。

 ただ、満足もしていなかった。


 階段を下りながら、ふと、こんなことを思った。

 もし、この感じが消えたら、どれだけ楽だろう、と。


 それは願いというほど強いものじゃなかった。ただの思いつきだ。すぐに忘れてもよかった。でも、その考えは、朝の光みたいに、静かに残り続けた。


 玄関を出る。空は晴れている。

 今日も、朝は来た。


 それだけが、確かなことだった。

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2026年1月15日 00:00
2026年1月16日 00:00
2026年1月17日 00:00

マドロミ ライカ_Lyka @abyss_fixer

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