第6話 知識とは力なり
早朝の水汲みが終わり、足が棒のようになってしまった私は、もう一歩も動けないと、椅子にもたれかかり、ぐったりしていた。
「シュン、よく頑張ったね! さすがに時間は随分とかかったが、ちゃんとやり終えられてえらいね! 私も根性がある子は好きだよ! 明日も頑張っておくれ!」
「あはは、ありがとうございます……」
苦笑いしながらお礼を言う私に、エリスは朝食を「賄いだよ!」と出してくれた。食堂でゆっくりと賄いをいただいていると、ジルが現れた。
「よう、シュン! お? 随分とくたびれてるな?」
「おはよう、ジル! シュンは早朝から水汲みを頑張ってくれたんだ。小さな体で文句も言わずにやり切ったよ。すごい根性だねえ」
「まさか、水瓶五つ、すべてにか? す、すごいな、シュン! あの坂を往復するのは、大の大人でも音を上げるというのにな!」
「三時間以上かかりましたけどね……」
「それは仕方ない。でも、成し遂げたことに意味があるんだ。この調子なら、覚えるのも早そうだね。早速、朝食を摂ったら、街の店を見て回るよ!」
楽しそうに笑顔で今日の予定を決められてしまった。まあ、この世界については無知だから、教えてくれるのは有り難い。環境が変わったというのに、どうしても『前世の癖が抜けないんだよなあ』なんて考えながら、黙々と食事を進めたのだった。
★★★
「この店だ。贔屓にしている店だから、何か不具合があれば力になってくれるからね。場所とおじさんの顔をよく覚えておくんだよ」
相変わらず親切なジルは、私を武器屋に案内した。なぜだろう? 私の持っている装備では、心もとないのだろうか。
「ふふっ、なぜ武器屋に? とでも思っているのかい?」
「えっ?」
「顔に出てるよ。可愛いね。ふふっ」
私は照れて頬を赤く染めながら、奥にいる男性に目を向けた。
「あはは! ジル、あまりいじめてやるなよ! 坊や、ワシはこの武器屋の親父でグレンだ。坊やの
「あ、はい。僕はシュンです。よろしくお願いします」
短剣を渡しながら、深くお辞儀をする。グレンさんは目を丸くして、私の背中をバンバンと叩いた。「ゴホゴホ!」咳き込むほど痛いんだがっ!
「ああ、すまんすまん。礼儀のなっている子どもなんざ、この街にいるとは思わなくてな! まあ、それはいいとして……。この獲物はお前さんには合ってないな。スライムやゴブリンすら倒すのは大変だったんじゃないか?」
「あ、はい……。スライムはぐちゃぐちゃになるし、一角うさぎは木から飛び降りて仕留めましたが、何時間もかかりました……」
「だろうなあ。お前さんは小さいし、力も弱い。魔物と戦うには、それなりに頭を使って、自分が怪我をするリスクを抑える必要があって――」
「オヤジ、七歳児には難しいと思うぞ。それより、合う獲物を選んでやってくれよ」
「ああ、そうだな」
私に合う獲物とは何だろうかと、少しワクワクしながら待っていた。昔、少しだけプレイしたことのある、冒険するゲームでは、ロングソードや魔法の杖などがあった。男としては、武器には心躍るものがあると思う。
「七歳と言ったな? そうだな、やはり力の要らないクロスボウと、もう少し軽くて細身の短剣だろうなあ」
「クロスボウ?」
「ああ、これだな」
「ボーガンかな……?」
「ボーガン?」
あ、ボーガンの由来は、弓(ボウ)と銃(ガン)だったか。銃のないこの世界では、分からないだろう。
「あ、いえ。これがクロスボウですか。僕にも使えますか?」
「ああ。この武器は、慣れるまでは練習する必要があるが、遠くの魔物を一匹だけヘイトを向けたいときなどにも便利なんだ」
「ヘイト、ですか。僕を認識させて、こっちに向かわせると……」
「ああ、そうだ。裏庭で調整もできるから、使いやすいものを選ぶといい。そうだな、出世払いでいいぞ! はっはっは!」
気前の良い親父さんと、楽しそうに見ているジルに、「ありがとうございます!」と、大きく頭を下げた。私の幸運は、この世界で初めて出会った人間がジルだったことだろうと、しみじみ思うのであった。
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