シンジ君と女神様と……

マロッシマロッシ

シンジくんと女神様と……

 シンジ・フジマサは、コールドスリープマシンから目覚めた。静かな電動音が鳴り、上半身がゆっくりと起こされる。


(……俺、何でコールドスリープに……?)


「大丈夫大丈夫! AIが大体やってくれるから! と、上官に言われて人手不足の中、1人で500メートル級の戦艦に強引に乗せられたは良いものの、基地から300光年先の目的地に到着する前にAIが謎のシャットダウンして、案の定遭難! コールドスリープマシンに入って目覚めりゃ何とかなる! 目覚めなくとも、苦痛なく天国に行ければまぁ良いやと、半ばヤケクソになってたんだよね!? シンジ・フジマサ君!」


 寝惚け眼で声のする方に首を回すと、見慣れぬ女が見た事ない宇宙服を着て立っていた。モデル並み……いや、女優以上に美しい。


(誰だ?)


「私? 女神!」


「……は?」


(ヤベェ……密入国者が乗り込んでいたのか。管理が杜撰すぎるだろ……そもそも、こんなデカい戦艦を1人で動かすなんざ、無理があったし……)


「密入国者と違うって! 女神だって言ってるじゃん! その証拠に、心を読んでるでしょ?」


「あ……」


(マジかよ……おっぱいを触っても、よろしいですか?)


「スケベッッッ!」


「ぶへらッ!?」


 シンジはビンタされた。


「……確かめたかったんだろうけど、丁寧に頼むあたりがキモいって! で、信じてくれた?」


「し、信じまひゅ……」


 シンジは頬をさする。


「よろしい。じゃあ次……私の名前を決めてくれる? 可愛いのが良いな!」


「名前を……?」


「私って、滅多に肉体を持って顕現しないから、神としか呼ばれないんだよね。今、女神だから……ね?」


 何が『ね?』なのか分からないが、シンジは言われた通り考える。


「で、では、レイ───」


「───元カノの名前付けんなッ!」


「ブッ!?」


 シンジの顔に、拳がめり込んだ。


「ないわぁ……元カノのレイナは、流石にないわぁ……」


 体内のナノマシンにより、鼻血は速やかに止まるが、痛いものは痛い。シンジが涙目になっていると、女神は手を叩いて急かす。


「はいはい! 頑張って次を考える! 可愛いのをお願いね!」


「じ、じゃあ……ヴィーちゃ───」


「ダッサ!」


 食い気味に否定された。


「シンジには、絶望的に名付けのセンスがない事が分かったわ。私の事は『ヴィーナ』で良いわよ。よろしくね」


「あ、ああ……それで……?」


「剣と魔法の世界に蔓延る魔王を倒して貰うわ! こういうの日本人は、何年経っても皆んな好きでしょ?」


(おお! 異世界転生……!)


「バカねぇ……貴方は生きてるんだから、異世界転移よ、て・ん・い!」


「そ、そうか……」


(転移でも何でも良い……ヴィーナさんは、どんなチートをくれる───)


「───あげないわよ、チートなんか」


 気持ちを読まれて、食い気味に否定された。


「ど、どうやって……?」


「戦うのかって? この軍艦からのレーザー掃射で魔王なんかイチコロよ!」


「えぇ……」


「あのね……普通に考えて、文明の低い魔王なんかに同じ目線で付き合う必要はないの。それに、空からレーザーを放ってモンスターなんかを蒸発させれば、神々しい感じがして住民達からの私への信心が、楽に集まるでしょう?」


「……思ったより腹ぐ───」


「シッ!」


「ロジョッ!?」


 回し蹴りが炸裂。シンジは気絶した。


 ウィィィン……。コールドスリープマシンのカプセルが閉まった。


 ナノマシンに、グジュグジュと止血されながら眠るシンジを見ながら、女神は喋る。ガラス張りのコールドスリープマシンの蓋を撫でながら……。


「シンジ君……貴方の乗ったこの軍艦は遭難し過ぎて、もう2度と地球圏には戻れないの……精々、私の役に立ってね。おっぱい触らせてと考えた時には滅そうと思ったけど……頼むわよ、『適合者』……」


「マスター……雰囲気たっぷりに言ってますけど、私をシャットダウンして、この軍艦を遭難させたのは、貴女の仕業ですよね?」


「フフッ。アイちゃん、まぁそこは良いじゃない! 楽しく、皆んなで旅をしましょうよ!?」


(AIの私をアイちゃんと名付けるセンスは、シンジと変わら───)


「───聞こえてるわヨォ?」


「ヒッ!?」


 彼等の珍道中が始まる。







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