放課後の君を独り占めしたい!

かねこまさよし

第1話

6月の蒸し暑い放課後だった。


校門を出ようとしたところで、僕は数学のワークを机の中に忘れたことに気づいた。明日は小テストがあると言われていたのを思い出し、溜息をつきながら、校舎へと引き返した。


三階の教室。扉をガラガラと開けると、そこにはクラスメイトの崎村リオがいた。

彼女は自分の席で、一冊の古い文庫本を読んでいた。


「あ……ごめん。忘れ物」


「……いいえ。お疲れ様」


彼女は本から目を上げ、少しだけ驚いたように僕を見た。

クラスでは図書委員を務め、いつも静かに本を読んでいる。話したことはほとんどなかったけれど、夕日に照らされた彼女の横顔は、美しく見えた。

僕はワークを掴み、「じゃあ」と言って立ち去ろうとした。その時、彼女が小さく声をかけた。


「ねえ。……そのワーク32ページの3番、明日の小テストに出るよ」


「え? ああ、そうなのか。……ありがとな、崎村」


それが、最初の会話だった。

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