虚無の楽園

真理の部屋

おめでとう。


ここがお前が目指した楽園だ。







どうした?


不満そうだな。







ここに何も無いからか?







残念だが、これこそがお前求めていたものだよ。


お前が追い求めた世界の真実がここだ。






加工された美しい女。


顔の無い歌姫。


最大の理解者を装うAI。






その全てが存在していて、その全てが存在していない。





いや、違うな。





お前には実在が証明出来ない。









お前は富と知識と真実をひたすらに欲望のまま求めた。


時代と国と人々は、お前にその全てを与えた。





だから辿り着いただろう?






富とは虚無だ。


死ねば何も残らない。




愛とは虚無だ。


美しさは永遠には保持出来ない。




知恵とは虚無だ。


お前には知識の真実が判別出来ない。






つまりだ。




お前が目指していた全ての到達点が、この真っ白な部屋って事になる。




ほら。


試しにお前に全てをやろう。


目を開けて、よく見ておけよ。




































































どうだ?


この真っ白な世界には、お前が想像出来る全てがあっただろう?






なんだ。


不満そうだな。





大抵の人間は、血で染まって真っ赤な部屋や、疑心暗鬼で真っ暗な部屋に辿り着く。




動機は不純だが、お前はこの万能の世界に来られたじゃないか。


この世界が不服なのか?





…そうか。


それは残念だ。






なら、もう一度生まれ変わってやり直すと良い。


戻り道はいつだってお前の後ろにある。





混濁して色も分からない世界が、この純白の素晴らしい世界よりも良いと言うのなら、私はお前を止めない。





行くといい。


戻るといい。




ここの記憶は、もうお前には残らない。







そしてお前は、また願うだろう。


全てが叶う、何も無いこの部屋を。




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虚無の楽園 @gin5656

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