臆病者で悪魔のような

おじぇ

語り部

やあ!少年!


おっと!怪しまなくてもいい!


私は罪なき者に危害を加えられない。


ただ聞いてほしいことがあるんだ。


私はこれまでに多くの者たちを葬ってきた。


だがそれも、ここまでのようなんだ。


聞こえるかい?私の後を追う声だ。


もはや時間がない。選択肢も限られている。


おっと!逃げないでくれ!

最初にも言った通り、罪なき者に危害を加えるつもりはないんだ。


ただ真実を打ち明けたいだけなんだ。


どうして、だって?


それは君が私と無関係の人間だからだ。


神に打ち明けてはいけない。それは赦しを乞うことになってしまうし、私のこれまでを否定することになってしまう。


いま私を追っている者たちに言っても駄目だ。奴らの宣う思想という名の薬では、私の体を蝕む憎悪という名の毒は決して取り除けないからね。


だから君に聞いてほしいんだ。

無関係な君になら、あるがままの僕を知り、語る権利がある。


どんな物語にだって、語り部が必要だろう?


だがその語り部が、どちらかに肩入れしていたら、真実が歪んでしまう。それは私も例外ではない。


本題に入ろう。少年。君には信念があるかい?


揺るがぬ想いと、それを貫き通す覚悟が君にはあるかい?


私は悪人だが、確かな信念がある。


多くの者たちは私を恥知らずの臆病者だと、血も涙もない悪魔だと言うんだ。


けれど、それは間違いで、臆病者は何よりも恥を恐れるし、悪魔にだって感情があるんだ。


状況を飲み込めていないって顔だね。


ようするに私は君たちと変わらない、ただの人間ということだ。


だから今回の事は悲しいし、人として恥ずべき行為だと思う。


でも仕方がないんだ。


それに言っただろう。僕には時間も選択肢は限られているってね? もはや手段を選んではいられないんだ。


そんな悲しそうな顔をしないでく

れ。その姿には、その表情は似合わない。ただ笑っていればいいんだ。


ありがとう。君には感謝しているよ。


おっと!後ろを見てくれ少年。ちょうど、お迎えが来たみたいだね!


無駄だよ。少年。


罪なき者には決して、危害を加えられないと言っただろう。今の僕に罪はない。それに語り部が必要なんだとも言ったよね。僕を知り、僕を証明する事のできる語り部がね。


だがそれも直に叶うだろう。だって君は僕なんだから。


抵抗しても無駄さ。残念だけれど、選択の時間はとうに過ぎてしまったんだ。


悲しいがさようならの時間だ少年。


僕は死にゆく君に恥じないよう、真剣に明日を生きていくよ。



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臆病者で悪魔のような おじぇ @Ojie

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