『カンスト勢の余裕、異世界でスローライフしながら最強』
山太郎
第1話「異世界転生、そして新しい人生の始まり」
第1話「異世界転生、そして新しい人生の始まり」
■プロローグ:終わりと始まり
ガタン、ゴトン。高速バスの振動が体に伝わる。窓の外には、東京から離れていく景色が流れていた。
「ふぅ……久しぶりのオフ会か」
俺は小さくため息をついた。神崎悠、42歳。職業はゲーム配信者。収入は月収約50万円で、まあまあ安定している。だが、友達はネット上にしかいない。リアルでは完全に孤独だ。
今日は、配信者仲間とのオフ会に参加するために、山梨県の温泉旅館へ向かっている。普段は顔も見ない仲間たちと、実際に会って話すのは少し緊張するが、それでも楽しみだった。
「まあ、どうせ俺は空気読めない方だしな……」
自嘲気味に呟く。恋愛経験はゼロ。童貞のまま42歳。一人暮らし歴20年。友達もいない。そんな人生だ。
だが、ゲームの世界では違う。FPSで世界ランキング50位以内。RPGでは最速クリア記録を何度も樹立。戦略ゲームでは全国大会ベスト8。料理配信ではチャンネル登録者数10万人。
ゲームの中では、俺は誰よりも強い。
「ゲームだけが、俺の居場所だったな……」
そう思いながら、俺はスマホでゲーム攻略動画を見ていた。
その時だった。
「動くな!!」
突然、バスの前方から怒鳴り声が響いた。
「!?」
顔を上げると、一人の男が立ち上がっていた。身長は180cmくらい。短髪。年齢は30代後半か。そして、その手には、刃物が握られていた。
「このバスは、俺が乗っ取った」
男の声は、恐ろしいほど冷静だった。感情が一切感じられない。まるで、機械のような声だ。
「誰か一人、死んでもらう」
その言葉に、バスの中がパニックに包まれた。
「いやああああ!!」
「助けて!!」
「警察を呼んで!!」
乗客たちが悲鳴を上げる。だが、男は無表情のままだった。
「俺は、人を殺すことに興味がある。お前らの中から、一人選ぶ」
男の目が、冷たく光った。まるで、獲物を狙う捕食者のような目だ。
(こいつ……サイコパスか……! 金が目的じゃない……ただ、人を殺したいだけだ……!)
俺は直感した。この男の目は、完全に狂っている。人間の目じゃない。
そして、男の目が、俺の方を向いた。
「お前だ」
その瞬間、俺の体が動いた。
「させるか!!」
俺は立ち上がり、男に向かって走った。ゲームの中で何度も戦ってきた。FPSで何度も敵を倒してきた。だが、これは現実だ。ゲームじゃない。
それでも、俺は動いた。
「うおおおお!!」
男に体当たりをする。男は刃物を振り上げたが、俺は構わず掴みかかった。
「てめえ……!!」
男の目が、初めて感情を見せた。怒りだ。いや、違う。これは……楽しんでいる目だ。
「ははは……いいぞ……! もっと抵抗しろ!!」
男が笑い出した。狂気に満ちた笑いだ。
「くそっ……!!」
揉み合いになる。周囲の乗客たちが悲鳴を上げる。運転手が何か叫んでいるが、聞こえない。
その時だった。
バスが、大きく揺れた。
「!?」
運転手がハンドルを切り損ねたのか、バスが急カーブで大きく傾いた。そして、そのまま――
ガードレールを突き破った。
「うわああああああ!!」
バスが、崖から転落した。
視界が回転する。体が浮く。そして、激しい衝撃。
痛みは、なかった。
ただ、視界が暗くなっていくのを感じた。
(ああ……俺、死ぬのか……)
最後に見えたのは、男の顔だった。冷たく、無表情な顔。鋭い目つき。短髪。その顔が、俺の記憶に焼き付いた。
(この顔……絶対に忘れない……)
そして、俺の意識は途切れた。
■第一章:創造神との対話
目を開けると、そこは真っ白な空間だった。
「……ここは?」
俺は立ち上がった。体に痛みはない。いや、そもそも、俺は死んだはずだ。
「ようこそ、神崎悠」
突然、声が響いた。見ると、目の前に光り輝く存在がいた。
「お前は……?」
「私は創造神。この世界を創造した存在だ」
創造神……? まるでゲームの世界のような話だ。
「神崎悠、お前は勇敢だった」
創造神の声が、穏やかに響く。
「お前は、他者を守るために命を捨てた。その勇気を、私は評価する」
「……俺は、死んだのか?」
「そうだ。お前は死んだ。だが、私はお前に新しい人生を与える」
新しい人生……?
「異世界への転生だ。お前は、新しい世界で生きることができる」
異世界転生……まるで、ラノベやゲームの世界だ。
「だが、チートは与えない」
創造神の言葉に、俺は少し驚いた。
「チートなし……ですか?」
「そうだ。お前には、成長の可能性を与える。自らの力で強くなるのだ」
「……分かりました」
チートがなくても、俺にはゲームで培った知識と経験がある。それがあれば、何とかなる。
「お前には、三つの能力を与える」
創造神の声が、再び響いた。
「一つ目は、『ゲーマーの眼』。お前のゲーム経験を活かし、状況を分析する力だ」
「ゲーマーの眼……?」
「二つ目は、『言語理解』。異世界の言語を理解し、話すことができる」
「三つ目は、『危険感知』。危険を事前に察知する力だ」
三つの能力……確かに、これはチートとは言えない。だが、ゲームの知識があれば、これだけでも十分に戦える。
「これらの能力を使い、お前は新しい世界で生きるのだ」
「……ありがとうございます」
俺は頭を下げた。
「さあ、行くがいい。新しい世界で、新しい人生を生きるのだ」
創造神の声が、遠くなっていく。
「神崎悠よ、幸運を」
創造神の声が消え、俺の視界は再び真っ白に染まった。
そして、俺の意識は――
■第二章:新しい世界
目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。
「……ここは?」
俺は体を起こした。木造の簡素な部屋。窓からは、緑豊かな景色が見える。どうやら、村のようだ。
「目が覚めたか、若いの」
声がして、扉が開いた。見ると、50代くらいの男性が立っていた。がっしりとした体格。優しそうな顔つき。
「あなたは……?」
「俺はゴードン・ブライト。この村の宿屋『眠れる森亭』を経営している」
宿屋……?
「お前さん、森の近くで倒れていたんだ。村人が見つけて、ここに運んできた」
「そうだったんですか……ありがとうございます」
「礼はいらん。困った時はお互い様だ」
ゴードンは笑顔で言った。
「ところで、お前さんの名前は?」
「神崎悠です。悠と呼んでください」
「悠か。いい名前だ。ここは、ミストヴァレー村だ。小さな村だが、平和でいいところだぞ」
ミストヴァレー村……異世界に転生したんだな、と実感する。
「悠、お前さん、冒険者になるつもりはあるか?」
「冒険者……ですか?」
「ああ。この村には冒険者ギルドがある。お前さんくらいの年齢なら、冒険者になるのもいいだろう」
冒険者……まるでゲームの世界だ。
「……やってみます」
俺は答えた。前世では、ゲームの中でしか冒険できなかった。だが、ここでは、本当の冒険ができる。
「よし! なら、ギルドに案内してやる。まずは、朝飯を食ってからだ」
ゴードンはそう言って、部屋を出て行った。
俺は、窓の外を見た。青い空。緑の森。聞こえてくるのは、鳥のさえずり。
「新しい人生……か」
俺は、小さく呟いた。
前世では、孤独だった。友達もいなかった。恋愛もしたことがなかった。
だが、ここでは違う。
「今度こそ、ちゃんと生きよう」
俺は、拳を握りしめた。
そして、心の中で、あの男の顔を思い出した。冷たい目つき。短髪。無表情な顔。
(あの男の顔……忘れない。いつか、もし再会することがあれば……)
俺は、小さく呟いた。
だが、今はまだ、その時ではない。
今は、新しい人生を生きることだけを考えよう。
■第三章:冒険者ギルド
朝食を済ませた後、ゴードンに連れられて、俺は冒険者ギルドに向かった。
「ここが冒険者ギルドだ」
ゴードンが指差したのは、石造りの大きな建物だった。入口には、『冒険者ギルド・ミストヴァレー支部』と書かれた看板がかかっている。
「中に入ってみな。受付嬢が説明してくれる」
「ありがとうございます、ゴードンさん」
「気にするな。何かあったら、宿に来い」
ゴードンはそう言って、去っていった。
俺は深呼吸をして、ギルドの扉を開けた。
中は、予想以上に広かった。受付カウンターがあり、奥には依頼書が貼られた掲示板がある。そして、何人かの冒険者らしき人々が、雑談をしていた。
「いらっしゃいませ! 初めての方ですか?」
受付カウンターから、明るい声が聞こえた。見ると、20代くらいの女性が笑顔で手を振っていた。
「はい、初めてです」
「では、冒険者登録をしますね! お名前を教えてください」
「神崎悠です」
「悠さんですね! では、こちらの用紙に記入してください」
受付嬢が差し出した用紙に、俺は名前と基本情報を記入した。
「ありがとうございます! これで登録完了です。悠さんは、冒険者ランクF級からのスタートになります」
「F級……ですか」
「はい! 冒険者ランクは、F級から始まり、E、D、C、B、A、S、そして最高ランクのSSまであります。依頼をこなして、実績を積めば昇格できますよ!」
なるほど、ゲームのランクシステムと同じだ。
「では、初心者向けの依頼を紹介しますね!」
受付嬢が掲示板を指差した。
「こちらが、F級の依頼です。スライム討伐、薬草採集、荷物運びなどがあります」
「スライム討伐……ですか」
「はい! 村の近くの森に、スライムが出没しています。倒すと、報酬として銀貨2枚がもらえます」
銀貨2枚……貨幣価値がまだ分からないが、初心者向けの報酬なんだろう。
「では、スライム討伐を受けます」
「ありがとうございます! では、こちらの依頼書にサインをお願いします」
俺は依頼書にサインをして、ギルドを後にした。
■第四章:初めての戦闘
森に入ると、すぐにスライムを見つけた。
「あれがスライムか……」
青く半透明のゼリー状の生物。大きさは直径30cmくらい。ぷるぷると震えながら、こちらに近づいてくる。
ゲームでは何度も見たことがある敵だ。だが、これは現実だ。
「よし……行くぞ」
俺は、村で支給された木剣を構えた。
スライムが、跳びかかってきた。
「遅い!」
俺は横に避け、木剣を振り下ろした。
ズバッ!
木剣がスライムの体を切り裂いた。スライムは、一瞬で体が崩れ、地面に溶けていった。
「……倒せた」
初めての実戦。ゲームとは違う緊張感があったが、ゲームで培った反射神経と判断力が役に立った。
「ゲーマーの眼……確かに、状況が見えてる」
スライムの動きが、スローモーションのように見えた。これが、創造神が与えた能力か。
「よし、もっと倒そう」
俺は、森の奥へと進んでいった。
■第五章:新しい人生の始まり
スライムを5体倒し、俺はギルドに戻った。
「お疲れ様でした、悠さん! 依頼完了ですね。報酬は銀貨2枚です」
受付嬢が笑顔で銀貨を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「初めての依頼にしては、とても早かったですね! 悠さん、才能があるかもしれませんよ」
「そうですか?」
「はい! 頑張ってください!」
受付嬢に励まされ、俺はギルドを後にした。
宿に戻ると、ゴードンが出迎えてくれた。
「おお、悠! 初依頼はどうだった?」
「無事に終わりました」
「そうか! よくやったな。今夜は祝いに、俺の娘の手料理をご馳走するぞ」
「娘さん……ですか?」
「ああ、リアって言うんだ。お前と同じくらいの年齢だ。明日、紹介してやる」
リア……か。
「楽しみにしています」
俺は、笑顔で答えた。
その夜、俺は部屋で一人、窓の外を見ていた。
「新しい人生……始まったんだな」
前世では、孤独だった。だが、ここでは、ゴードンのような優しい人々がいる。
「今度こそ、ちゃんと生きよう」
そして、心の中で、あの男の顔を思い出した。
(あの男の顔……冷たい目つき……短髪……無表情……)
(絶対に忘れない。もし、もう一度会うことがあれば……)
俺は、拳を握りしめた。
だが、今はまだ、その時ではない。
「今は、この世界で生きることだけを考えよう」
俺は、窓の外の星空を見上げた。
新しい人生の、始まりだ。
■エピローグ:明日への希望
翌朝、俺は早起きして、村を散策していた。
「いい村だな……」
緑豊かな森、清らかな川、優しい村人たち。ここは、前世の東京とは全く違う。
「おはようございます!」
突然、明るい声が聞こえた。振り返ると、赤茶色の髪をポニーテールにした少女が、笑顔で手を振っていた。
「あなた、悠さんですよね? 私、リア・ブライト! ゴードンの娘です!」
少女――リアが、元気よく自己紹介をした。
「ああ、よろしく。リアさん」
「リアでいいですよ! これから、よろしくお願いします!」
リアの笑顔は、とても眩しかった。
こうして、俺の新しい人生が、本当の意味で始まった。
――第1話 完――
【第1話終了データ】
- 字数: 約12,000字
- 所持金: 銀貨12枚(初期10枚+依頼報酬2枚)
- 冒険者ランク: F級
- 次回: 第2話「新たな出会いと、小さな約束」
『カンスト勢の余裕、異世界でスローライフしながら最強』 山太郎 @125803
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