萌えよ妹
フリオ
第1話 麦ちゃんは、もえています。①
妹というのは友情・努力・勝利から最も離れた存在だ。
友情? 育まれるわけがない。似たような感情があったとして、それは家族愛。
努力? 妹というのは怠惰な存在。欲望にまみれて、布団に潜り、惰眠を貪る。
勝利? 兄にとって妹というのはそれだけで勝っている。勝負にすらなっていない。
そんなわけで俺にも妹がいる。名前は一ノ瀬麦茶。麦ちゃんは俺が四歳のときに生まれた、腹違いの妹だ。
今の義母(麦ちゃんの実母)は、俺がもう少しで四歳の誕生日を迎える三歳の春に父親が再婚した相手だった。ちなみにできちゃった婚。
無知だった俺に詳しいことは分からなかったけど、妹ができるということで兄としての……あー、なんだろう、そのときの変革を覚悟と呼ぶにはそれはあまりにも自然で滑らかだったからそうだな……成長と呼ぶことにしよう。そのときからただの子供としてだけではなく、俺は兄として成長することになったのだ。
もちろん途中から兄だった俺とは違って、麦ちゃんは生まれたときから妹だった。
生まれたてのときはツルツルだった麦ちゃんも成長するにつれて家族として面影が目立つようになった。麦ちゃんのフワフワクルクルの髪質は父親に似て、ミルクに蜂蜜を落としたような茶髪は母親に似た。兄妹で似ているとしたら髪質の方で、俺は黒髪だったけどクセッ毛なのは一緒だった。
麦ちゃんは内向的な性格に育った。普段は無口で、しかしテンションが上がったときにはポツポツと何かを呟くようになり、女の子の友達を家に連れてきたときには麦ちゃんなりに口数が多くなった。学校でのことは分からないけど、家に連れてくるような子はその女の子だけだった。
そんな麦ちゃんが不登校になり部屋に引きこもるようになった。麦ちゃんが中学一年生で、俺が高校二年生のときのことだった。それがあまりにも唐突でキッカケも分からなかったから俺たち家族はさぞ困惑した。
麦ちゃんが部屋に引きこもっている間も唯一の友達はたびたび遊びに来てくれた。麦ちゃんの友達の名前は佐野さんと言った。ある日、僕は家の廊下で佐野さんとすれ違った際、麦ちゃんのことについて何か事情を知らないかと尋ねてみた。すると佐野さんは少し笑ってこう言った。
「麦ちゃんは、もえています」
麦ちゃんが突然部屋に引きこもって不安だったけど、佐野さんのその言葉を聞いて何となく安心した。もえているっていうのがどういう意味なのかは具体的には分からなかったけどな。その日の夕飯のときに父と義母にも大丈夫だって確信を持って伝えてた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます