偽りの日常
第1話 尊い時間
連合の降伏から実に3年が経過していた。すっかり連合の領土は帝国管轄となり、議会なども帝国主導で行っている。一つ一つは小さな国々だが、それらが合わせると帝国に引けを取らない程の土地となっていた。
臨時召集で最後の戦場だけを出向いていた私は、戦場さながら生き延びた。いや最後に使い手によって救われたって表現が適切か。今は戦後の処理でどこも忙しい。まだ子供で臨時の年齢最低ギリギリだった私はそのまま帝国の軍事学園に入学する事が出来た。これも奇跡に等しい事だ。
その為寮生活をしていたが、長らく家すらも帰っていない。顔を出したくないっといえばそうだ。家は広いが、最近は居心地が悪くなっていたのもある。多分だが、今は実家は相当忙しくなっているだろう。猫の手を借りたいぐらいには。
「また一人か。歴史書でも読んでいるのか?」
一人図書室、そこに眠る歴史書を読んでいた私に声を掛けてくる。良いところだった。不機嫌な顔をしながらも声の方へと視線を送る。
「シャル。本当に本読むの好きだよな」
「余計なお世話だ。それに今は自由だろ?」
今日はなにもない。だから図書室で時間を潰していた。こいつは人誑し・・・いや元気な野郎か。ジーメリア・シュトリアーナ。相部屋の腐れ縁的な存在だ。
戦場帰り、学園にいる連中の一部、いや私やジーメリア含めてそう呼ばれている。臨時で呼ばれたのもあり、戦後魔力測定で既定値があったのもあり、戦争参加の報酬で無償で今学園にいる。
「だな。シャルよ。たまには学園にいる女性を口説くのもありだぜ。お前なら一人や二人誘えるだろ」
「またその話か。私は興味ない」
「もう時期卒業だろ。だからこそ、いい思い出なんか残しておいても良いんじゃないか」
「お前はそうでも、私は思っている以上に評判良くないからな」
よく周りの話を盗み聞きする。平民として今いる私はやはり平民だからって印象を持たれているからこそ、偏見的な意見が多い。貴族や平民がいるこの学園では特に貴族が偉そうな口でいる事もいる。どう見ても戦場にさえ権力で行ってないであろうボンボンが戦場でどうたらこうたらと自慢を聞かされる。
ただ戦場帰りは敬意を示しているのか、若干制服が違う。だからこそ、自慢だろうが制服でバレバレではある。
「それに実家に顔出さなくてもいいのかよ。飛び出したんだろ?」
「まぁな。多分心配はしてない。生きてるって情報も耳に入ってるだろうから大丈夫だろう。そういう家庭なんだ」
「そうか。そう言うならまぁいいのか」
今見ている本を閉じた。ある程度読み終わった。元の位置にその本を戻す。時刻を見て、私は廊下へと歩き出す。彼もそれに続くように歩いてくる。廊下は静かだ。休みが4連休となるとこうも実家に帰る輩が多いかもしれない。
広い中庭が見える位置に差し掛かった時に大きく鐘がなる。昼を告げる鐘だ。
「そういやもうこんな時間か。あとこの鐘は何回聞けるかな」
「さぁな。私達はここを出たら配属だからな。もし近くなら何度も聞けるだろう」
食堂に続く道を歩きながら、そんな会話を繰り広げていた。
「なぁ聞いたか。クラスのシェリアって子、告ったって話だぜ。それも同じクラスのガナッシュ」
夜、寝室で彼は語っていた。もう卒業となると最後くらい思いを伝えたい人らは行動に走る。そんな話をする彼でさえ後輩に告られたって話だ。
私には無縁の事だ。
「離れ離れになるのによくやるよ。それで夫婦になれるかなんて分からないのに」
「だな。でも伝えたいなら今しかない。次会う機会なんてないかもしれないからな」
「それもそうか。そんなイベント私には無縁だ」
それはないぞってばかりに彼は言ってくる。何がなんと言った所で私には関係ない事だ。
顔は良い、スタイルは良い、目つきで落とされかけたって話を彼はしている。いや、初めて聞いた話だ。ただ聞いてなかっただけかもしれないが、それでも私に声を掛けてくる人はいなかったが。
もうじき卒業、その前に配属先を言い渡される。成績はあまり良くない私は平凡できつい所なのだろうとは思う。皆が憧れる所には行く機会はもうないだろうから。
虚構レグナンス シノ・メイ @sirakuni
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