第九話 支配の一族、天卿法師(てんきょうほうし)

「お見事。さすがのお気に入りだ」

 

 押し倒されたコ―ガは両手をあげ降伏の姿勢を見せる。その表情は先程の戦闘が嘘のような穏やかな表情だった。

 

 コ―ガの手をはなし、立ち上がるアスカ。


?」


 アスカはコ―ガに手を差し伸べる。


 コ―ガは左手で、アスカの手を取り立ち上がった。


 そして、アスカにの名を告げる。


「ああ、だよ」


「――っ! 知ってるんですか?」


 どこか遠いまなざしで、床を見つめるコ―ガ。


「ああ、さ」


 コウジは二人に近づく。ちなみに青年は、コウジの手刀で気絶中である。


「なぁ、先輩。聞きたいんだが、他の天器てんき使いも、脱国だっこくに一枚かんでるのかい?」


「安心しな。は私と、アサンテの二人さ」


?」


「ああ、待っていたのさ。他の天器てんき使いを」


 予想だにしない言葉に、顔を見合わせるアスカとコウジ。


「単刀直入に言う。この


「どういうことですか?」


 コ―ガの言葉を、抑揚のない声が遮った。


。コ―ガ」


 固まるコ―ガ。


 言葉の主は、運転手のショウシだった。


 コウジは、マッチ箱を取り出し、臨戦態勢をとる。


「ただの運転手じゃないとは、思っていたが、まさか、天卿法師てんきょうほうしとはな」


「改めて、自己紹介しましょう。私はノア王国支配の一族、天卿法師てんきょうほうしのショウシと言います」


「こんな大物が出張ってくるとは。どうやら、先輩の話がじゃなくなってきたなぁ」


 ショウシの支配から、不意に解き放たれたコ―ガは、手袋をはめ直しながら、アスカとコウジを庇うように前に出た。


私は嘘と煙草が嫌いだって言ったのを忘れたのか? え? コウジ」


 コウジは、コ―ガに掠れた笑いを返しながら、肩を並べる。


「ああ、。先輩」


 コウジが発した単語、天卿法師てんきょうほうしの意味を思い出し、アスカは驚きを隠せずにいた。そして、片眼鏡モノクル


「ん? ええ! 天卿法師てんきょうほうしって、言葉一つで私達、天器てんき使いを支配できる。あの、王国直属の隠密精鋭じゃないですか! なんで、そんな人が」


「王国はそれだけ、切羽詰まってんだろうよ!」


 コウジは指を五本立てて、マッチ箱に手を付ける。


「そうだ! アサンテは、この国には明日がないと。国民を救うための天上神器てんじょうしんきを探すために、に出たのだ!」


 コ―ガは、右手を握りしめる。


「天器使い達よ! 動くな」


 コウジとコ―ガは、苦悶の声を上げ、動きを止められた。


 ショウシは動きを止めた彼らを確認し、不気味に笑いを押し殺すのだった。

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