黒より黒く、白より白い。
夜行
パンダの独白
私は今、オムツだ。
生まれて間もない動物の腰回りに取り付けられ、汚物を抱えたまま、濡れた紙と一緒に処分される。
私は今、スプーンだ。
抱えては剥ぎ取られ、抱えては剥ぎ取られる。
仕舞いには、よりどりみどりな地面へと突き刺される。
私は今、丸と三角と四角だ。
転がされ、握られ、投げられる。
正しさの代わりに、天を目指した塔が建つ。
崩れ落ちた景色を、もう誰も覚えていない。
私は今、振り回されている。
どこへ向かうでもなく、与えられたエネルギーは遠心力を生み続ける。
ただ繰り返し、摩耗し、解ける。
止めることさえ、悪であると断じる。
私は今、ペンだ。
黒を吐き出し、白を染め上げる。
境界を作り、乾いた声で、元には戻れない風穴を開ける。
ここは私にとって最も居心地がいい。
私は今、海に浮かんでいる。
照らす光が強いほど、大きく軽く見える。
軽く見えれば浮くが、大きく見えると重く見える。重く見えれば沈む。
ただ静かに、季節と共に流れ行く。
私は今、器だ。
満たされるために空であるが、満たされたくなどない。
内側が都合で満たされた後、どうなるか知っているからだ。
私は今、清涼飲料水だ。
舌に残る嫌な甘み。
脳天へ届くビビッドな香り。
地平線まで届く色彩。
中身などお構いなしに貼り付けられたラベルは、架空の世界を紡ぐ。
私は今、服だ。
形骸化した役割は、内側を隠し、歴史として重なる。
清潔な存在として、触れたものを壊す。
私は今、私に囲まれている。
かつて私だったものが、私の外側を埋める。
外側が、内側を生み出す。
毎日が、朝と夜のサイクルに沈んで酔う。
もしも輪廻があるならば、次に私は海の下へ沈んでいるだろう。
浮くこともなく、これ以上沈み込むこともない。
一切に、もう用などない。
黒より黒く、白より白い。 夜行 @Yako_jwkf
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