不動の、マッキー





お屋敷の中へ通された。

私とマッキーは、とんでもなく広い廊下を歩く。


奥から、笑い声が響いてくる。

「わっははは、きゃはは」


マッキーが、小声で言った。

「宴会か、何かやってます?」


私は笑いながら答える。

「そうだよ。今日の仕事は、

 日付が変わるまで宴会を見守ること」


それから、少し声を落として付け足した。


「ここで、見たこと、聞いたことは、

 絶対に話しちゃいけない」


さらに、軽く。


「約束できるなら、ボーナス出るよ」

マッキーの顔が、一気に真剣になる。


「緑屋の、桜 真希です。依頼主の秘密は、

 絶対に守ります」


そう言うと、彼女はスマホを取り出し、

物件検索を始めた、引っ越す気だろう。


家賃を上げて、できる系の女性に

ステップアップするつもりだ。


お手伝いさんに促される。


「こちらです」


お座敷の前で、障子は閉じられていた。

中から、笑い声が溢れてくる。


「わはは、ぎゃはは」


どう聞いても、大宴会だ。


お手伝いさんは、


「私は、ここで」


そう言って、来た道を戻って行った。


旧暦の十三日。

時刻は、二十二時三十分。

日付が変わるまで、中に入っていればいい。


何もしない。気にしない。

そう、マッキーに説明する。


「分かりました」


スマホを握りしめたまま、彼女は頷いた。

今日中に、決めるつもりなのだろう。


引っ越し先を。


「よし、行こう」


私は、片側の障子を、静かに開けた。

豪華な料理。酒、雅な音楽。

唄えや、踊れやの、宴会だった。


入口近くの、空いた席に

私とマッキーは腰を下ろす。

マッキーは、ぶつぶつと呟きながら、

物件検索に夢中だ。私は思う。


マッキーは、凄い。彼女はもう、この場に、

………興味が無い。

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