月の世







――――――――――


今日は月が明るい。旧暦の十三日、

月がよく出る夜だ

月に一度の稼ぎ時になる。


「少し、肌寒くなりましたね」



夜勤で、マッキーにも同行してもらった。

街から少し離れた、お屋敷に辿り着く。


運転席から少し見上げ、

小高い丘にある屋敷を

指先で示す。


「あそこが、そうだよ」


助手席で、マッキーも見上げた。


「立派なお屋敷ですね」


月明かりに照らされて、白い塀と黒い屋根の輪郭が、やけにはっきり見える。


車のエンジンを切ると、夜の音が戻ってきた。虫の声と、遠くの木が揺れる音。

屋敷の門の脇から、お手伝いさんが現れた。


「遅くに、すいません。

 いつもの、よろしいですか?」


車を降りて、


「はい、いつものですね」


それ以上の確認は無い。それで通じる。

門が開くと、

砂利を踏む音が、やけに大きく響いた。


マッキーは一歩遅れて、

私の後ろに付く。何も聞かない。

けれど、鞄の持ち方だけ、少し変えていた。


「足元、暗いから」

それだけ言うと、マッキーは小さく頷く。




屋敷の中は、月の光が

廊下の床に差し込み、影が長く伸びている。


「迷子になりそうですね」


「慣れるよ」


そう答えると、マッキーはそれ以上、

何も言わなかった。

この屋敷で、今夜も仕事が始まる。


――――――――――

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